人生は花鳥風月

森羅万象様々なジャンルを名もなき男が日々の心の軌跡として綴る

哂う疵跡  一話

2005年(平成17年)の夏は暑かった。例年のように厳しい暑さを訴える夏という気節は有難い反面鬱陶しいようにも思えないでもない。 勇ましくも煩い蝉の鳴き声、燦然と照り輝く強烈な陽射し、青々しい樹々に草花、汗を拭いながら道行く人々に意気揚々と走り回…

来てるのか!?  台風襲来に対する心構えと要望

ちはやぶる 嵐の前の 気の逸り(笑) いやいや、9、10、11号と次々に発生した台風が疾風の如く日本列島に襲い掛からんとしているようですが、皆様方は如何おあそびあそばされていますでしょうか? 世間は五輪ピックにコロナ、メキシコ麻薬戦争と相変わらずニ…

甦るパノラマ  最終話

物言えば唇寒し秋の風。せっかく面会に訪れたというのにいざ英昭を前にするとなかなか言葉が出て来ないさゆり。彼の姿に大した変化は見受けられなかったものの、何かが邪魔をしているような気がする。それは英昭とて同じで言いたい事、訊きたい事は山ほどあ…

甦るパノラマ  三十二話

英昭の母の容態は連日のように如才無い献身的な看病をしてくれていたさゆりと、その胸襟を開いた会話に依って思いの外早く回復して行くように見える。 医師から軽い脳貧血と言い渡された彼女はしっかりとした養生をするよう指示を受け、薬を貰って退院する。…

甦るパノラマ  三十一話

病室に入ったさゆりが目にした光景は御労しくも嘆かわしい、同情を禁じ得ない実に不憫な英昭の母の姿だった。 既に眠っているであろう彼女の手をそっと握り瞑想するさゆり。すると彼女は徐に目を開けてか細い声で語り掛けて来る。 「さゆりちゃん、来てくれ…

甦るパノラマ  三十話

罪を認めた英昭は取り合えず警察の留置所で一夜を明かす事になった。主犯である義正も既に取り調べを受け留置されているとの事だった。 初めて味わう罪人としての処遇。それは今までの彼には想像もつかない話であった事は言うに及ばず、いくら夏とはいえこの…

甦るパノラマ  二十九話

それからの二人は以前のような仲の良い恋人として恙ない日々を送っていた。毎日のように連絡を取り合う間柄は初恋を思わせるような初々しさで互いの心を刺激しながらも和やかな雰囲気を自らに与えてくれる。 張りのある生活とはこのような事を指すのだろうか…

五輪ピックを6.5倍楽しむ方法  ~記憶に残る名選手達

炎天下 蝉も汗ばむ 葉月かな(笑) いよいよ8月になりましたかぁ~。やはり時は一瞬たりとも止まってはくれないみたいですね。当たり前ですけど。 世の中はオリンピック一色という感じに見えますが実際はどうなのでしょうか。何れにしてももはや五輪開催の賛…

甦るパノラマ  二十八話

酒に十の徳ありと言うが今の二人には幾つの効果が齎されたであろう。気分的には愉快である事は言うまでもないのだが、別に悩みが一掃された訳でもない。無論そこまで高望みする訳でもないのだが、愉快に微笑みながら談笑する表情の中にも何処か翳を感じてし…

7月の終わり  しておくべき事 ~心構え、抱負

去り際の 態も見事な 文月よ(笑) いよいよ7月も終わりを迎えますか。本当に早いですね。この前正月になったばかりと思っていましたが、もはや7月も終わり盆も間近、そしてまた正月と。 儚きは世の常。それに抗う事ほど虚しいものは無いように思える今日こ…

甦るパノラマ  二十七話

まだ二十歳過ぎである英昭にとって600万円という金額は大金だった。初めて手にする金。札の幅は同じだが厚さは約60mm(6cm)、とてもじゃないが財布には入らない。勿論入れる気も無い。ならば何処に保管するのか。金融機関に預けるのはヤバい。となれば自ず…

英雄に天下は取れない?

風吹けば 心安らぐ 猛暑かな(笑) それぐらいで安らぐ訳ないやろっ! っていう話なのですが、ここらで一雨降って欲しい所ではありますね それにしてもこの連日の酷暑の中、皆さん如何お過ごしあそばされていますでしょうか。くれぐれもご自愛のほどお祈り…

甦るパノラマ  二十六話

現場に着いた二人は手筈通りに防犯カメラにスプレーを吹き付け辺りを警戒しながらも素早く行動する。英昭はシケ張り、義正はATMが置かれているハウスぎりぎりに付けていたトラックの上から直接重機を操縦する。 華奢なハウスは一瞬にして潰れ去りATM機が姿を…

甦るパノラマ  二十五話

案ずるより産むが易し。どうせ一回きりの人生ならたとえそれが悪い事であっても、大して人に迷惑を掛ける訳でも無かったら人を殺める訳でも無い、所詮はあくどく儲けているサラ金業者の金ではないか。ならばいっそそれを奪う事に依って正義の証とする事も出…

お題 記憶に残るあの日  ~情けない話

はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」 あの日 あの時 あの場所で 君に会えなかったら 僕らはいつまでも 見知らぬ二人のまま ♪ って当たり前やろ!って話なのですが、そんなツッコミを入れてはいけません(笑) 残念ながらそんな劇的でド…

甦るパノラマ  二十四話

何とも薄汚れた、見窄らしい恰好をしている義正には清潔感や若さが全く感じられなかった。皺だらけのシャツに洗ってもいないような擦り切れた薄っぺらいズボンに黒ずんだ白い靴。髪もボサボサで風呂に入っている様子もない。虚ろな目つきに光は無く死んでい…

甦るパノラマ  二十三話

都会の喧騒とはいうが、敢えてそこに身を窶す、ギャンブルに嵌っているこの現状に憂き身を窶す事に依って何がしかの突破口を見出そうとする思慮も決して間違ってはいない気もする。堕ちる所まで堕ちないと底が見えない、と言えば浅はかな感じもするのだが、…

甦るパノラマ  二十二話

英昭が社会人になってから早や3年という歳月が経った。22歳になった今その生活は更に荒み、劣化の一途を辿っているように見える。もはや彼はまともな人生を歩む気すら無くしてしまったのだろうか。勤務態度も悪化し無断欠勤する日も多い。始めの内は母に対し…

甦るパノラマ  二十一話

午後8時前、英昭はそのまま駅前にあるパチンコ店に駆け込む。混んでいた所為もあったが時間に余裕の無かった彼は大して何も考えずに行き当たりばったりで空いていた台に坐る。初めて打つ機種だった。データカウンタを見上げると本日の大当たり回数は23回とそ…

甦るパノラマ  二十話

英昭はこんな形でしかさゆりと会えなかった自分を恥じた。都会の喧騒は彼の陰鬱な心持を更に曇らせる。大勢の群衆で溢れる帰宅ラッシュ時の忙しい駅前に、まだ世に擦れていないさゆりの純粋で淑女のような気品を漂わす綺麗な姿は少し浮いているようにも見え…

甦るパノラマ  十九話

さゆりの記憶の中で自分から電話をした事は一度も無かった。当然英昭が出なかった事も。高校生時分では翌日にその様子を確かめる事も出来るのだが、今となってはそれも難しい。わざわざ家まで行くのも憚られる。そこまで深く考え込むのも彼女らしくない訳な…

オリンピック心得  大暑 ~円周率(心)近似値の日

蒼天に 想いを馳せる 五輪かな(笑) いやいや、暑い日が続きますが正に夏真っ盛りという感じですかね。子供の頃ほど夏の到来を喜べないくせに、夏の終わりには毎年決まって虚無感に襲われるという自分も情けない限りです(笑) 何れにしてもいよいよ明日オ…

甦るパノラマ  十八話

付き合いの酒に付き合いのギャンブル。付き合いという言葉からはろくなものがイメージ出来ない。余り気は進まなかったがギャンブル好きな性質と、酒の影響で多少なりとも気が大きくなっていた英昭は歩みを止めなかった。 そこは初めて来る店であったが仕事帰…

甦るパノラマ  十七話

桜が満開に咲き誇る頃、世は新年度を迎える。もはや残冬の肌寒さも消え去った地上はすっかり春の陽気に包まれている。燦然と輝く陽射しには謝意を感じるが結構眩しい。その穏やかな光に乗じるようにあらゆる生命は元気に躍動し始める。 天為に依って開花した…

甦るパノラマ  十六話

「そんなに深く考えなくても、今の貴方のままでいいのよ」 さゆりが発したこの一言は言葉であって言葉で無い。理性ではなく感性。英昭の感覚に直接刺激を与えたさゆりの想いがどれだけ彼を楽にさせたか、その力は計り知れない。安心した英昭は軽く笑みを零す…

保守と革新  ~選挙に見る無常感

移り行く 空の景色も 無常かな(笑) もはや梅雨も明け外の景色もすっかり夏一色になりましたね。無論それはそれで良い事なのですが、暑い夏の到来と短い春にも色んな想いを巡らしてしまう自分がいます。 そこで昨日行われた兵庫県知事選。自分の地元兵庫県…

甦るパノラマ  十五話

恋に焦がれて鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす。どちらかと言えば互いに無口な方だった英昭とさゆりとの関係は蛍の恋に近かったのではなかろうか。 身体の契りは交わしても未だ心の契りは交わしていないというのが正直な気持ちかもしれない。別に焦る訳でも…

甦るパノラマ  十四話

二人だけの卒業式。真の卒業式。その日に交わした初めての契りはこの3年間の高校生活の集大成を飾るような烈しくも甘美な形を彩り、二人の愛の着地点でもあったのか。そう解釈してしまうのも些か虚しい気もするのだが、少なくとも一つの節目であった事には違…

甦るパノラマ  十三話

光陰流水の如し。高校に入学して早や3年という歳月が経った今、英昭はいよいよ卒業の時を迎える。まだ寒さの残る3月上旬ではあったが、1、2月をやり過ごした事で少しは気が楽になっていた。 桃の花を見上げながら思う事はその美しい佇まいと、この3年という…

甦るパノラマ  十二話

それから一年余の月日が流れ高校三年生の正月を過ぎた一月中旬。秋の優雅な雰囲気を一切拭い去ったこの時期に感じる事はただ寒いだけという実に淋しいものだ。あれだけ鮮やかに咲き誇っていた樹々もすっかり枯れ果て、葉を失ったその姿はまるで案山子のよう…