欲望の色 弐章 ─青春の陰り─
修二をやったのはf先輩だった。詳しく話を聞くと今回の件でいきなり見返りを求めてこられて自分の女を差し出せと言って来たらしい。それで修二が断ったら有無を言わさずシバかれたんやと言う。
みんなは如何にもfらしいやり方とは思ったがそこまで根性が腐ってるのかと困惑していた。やはりこの人に頼むべきではなかったのだと悔恨の念が残った。修二の女も確かにポン中ではあったがあっさりfの女になり今では修二の事など何とも思ってない様子だった。修二はやられ損になっただけだった。
修二も修二で大して凹む訳でもなくそれからもみんなでヤンキー生活をエンジョイしていた。
年が明けてみんなは進路を考えていた。仲間内では修二と竜が就職を考え俺を含めた他の奴等は進学する事に決める。
修二は中2の頃からほとんど学校にも来ない日々が続いていたので卒業式にも出るなと先生から言われていたがみんなの助力もあって何とか卒業式だけは無事に出る事が出来た。式が終わってみんなで卒業記念に国道を明け方まで暴走した。みんな浮かれて何処までも突っ走った。そしてある公園に落ち着いた時、修二が軽く呟く。「俺何とか卒業は出来たし小さいとこやけど一応就職も決まったんやけどこれから生きて行けるのかな」
「何言うとんねんお前らしくもない、まだまだ若いねんからどないでもなるやろ」
「そうやな」
他のメンバーも無事入試試験に合格して取り合えずは一安心していた。
英樹は工業高校に進学した。
親父の跡を継ぐ為にも手に職を付けたかったのだ。学校で色んな事を学んで親父からも鍵の事について本格的に教わった。そんな中一人の女と恋に落ちる。
名前はあゆみ、同級生だったんだがヤンキーとは縁も所縁もないような女で何故俺のような男を好きになってくれるのか不思議に思っていたが意外と話も合うし綺麗で可愛いし英樹は満足していた。
或る日あゆみは「英樹君ヤンキーなんでしょ、私もバイクに乗せてよ」と言う。
「危ないしあゆみみたいな子はそんな事したらあかん」
「何で? 別にええやん、バイクに乗りたいの! 乗せてよ!」とせがむ。
仕方ないから一度だけ後ろに乗せてやって走ると「めっちゃ気持ちいいー」と喜ぶ。
英樹も女を乗せて走るのは初めてだったので結構おもろかった。
特攻服の腕の部分には「あゆみ」という刺繍も入れた。
学校でも何時も二人でベタベタしてたんだがガラの悪そうな奴に絡まれる事もあった。だが英樹は全く動じる事なく一瞬にしてそいつをシバき上げる。そうしていく内に学校での名声も拡がり仲間も増え暴走族の構成員は一時期100人を優に超えていた。
英樹は俺の行く末には一点の曇りもないと調子づいていた。
そんな中、久しぶりに修二と会う。修二はここの所チームの集会にはあまり顔を出していなかったので真面目に仕事に精を出しているものとばかり思っていた。
が、その時の修二の姿は如何にもと言わんばかりの厳ついスーツに短髪にサングラスをかけて現れた。
「お前何やその恰好は?」
「どうや、カッコええやろ、仕事辞めてヤクザになったんや」
「ふ~ん、お前の勝手やから好きにしたらええとは思うけど」
「そこで実は会って欲しい人がおるんや」
「誰や?」
柱の影から出て来たその人はf先輩だった。俺は嫌な予感がした。
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