人生は花鳥風月

森羅万象様々なジャンルを名もなき男が日々の心の軌跡として綴る

サメとワニ

  六章  ─蟠り─

 

 

 やがて兄弟は結婚して子宝にも恵まれる。

子供の名前を考えていた時、母がこう言った。

「二人共全然違う名前にしなさい、これだけは是非とも聞いて欲しい」と。

二人の夫婦は共にそれを承諾して雄一の子には「真治」、雄二の子には「沙也加」という名前が付けられた。

男と女だったので従兄とはいえ仲たがいする心配もいらないと思ったが二人共に全く関連性のない名前にした。

 

その後も雄二は出世街道まっしぐらといった感じでみるみる出世して行き、今では部長になっていた。

雄一は相変わらずの責任者止まりで所詮はしがないブルーカラーといった風で責任者でありながらも人間関係もあまり巧くは行っていない。

でも母としてはもはや孫まで出来て嬉しい限りだったに違いない。二人はそう思っていた。

 

雄一は不意に仕事を辞めたいと思った。

かみさんも猛反対する。

「一体何で? いくらあなたが人間関係巧く行ってないとはいえ辞める事までないでしょ?」

「いや、もう決めたんだよ」

「一人で勝手に決めないでよ」

母は黙って聞いている。

そして一言だけ「思うようにしなさい、但し絶体に奥さんにも子供にも迷惑を掛けないように」と念を押す。

雄一は「母さん俺一緒に店やるよ、そうしたらもっと繁盛するだろ」

「分かったわ」

かみさんは納得いかないような節もあったが結局三人で親の家業である中華屋をする事になった。

 

兄弟共に幼少の頃から店を手伝っていたので料理や接客は今更教わるまでもなく仕事は捗った。

でも母からは仕込みや料理、接客のイロハまで一から教わった。

後は店を繁盛させるだけだ。店を新たにリニューアルし広告も作って宣伝活動にも勤しんだ。

 

そして新装開店初日店は大繁盛した。

晴れやかな空が拡がっていた。

 

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接客の方は愛想の良いかみさんに任せ親子二人は料理を担当する。

店の経営は順調に行き倖せな日々が続く。

 

そんな或る日ガラの悪そうな連中が店に来る。

母は言う「絶体に相手したらダメよ、一応お客さんなんだから」

「そんな事分かってるよ」

店には一応酒も置いてあったがあくまでも中華屋でそこまで長居する客はいなかった。

でもその連中は違った。酒ばかり飲んで酔っぱらってあげくは店に対して文句まで言い出す始末である。

「よく繁盛してるみたいじゃねーか、これだけ繁盛してるなら上がりの何割かでも入れて貰わねーとな」

雄一は抑えが効かずに打って出る。

「あんたら何処のもんだよ、うちは堅気なんだ、何でそんなもの渡す必要があるんだ」

「お前、何時かの坊主じゃねーのか? おー?」

よく見るとそいつは昔借金の取り立てに来ていたヤクザだった。

「兄ぃ知ってるのですかい?」

「おう昔世話してやってたんだよ」

すると母が店に出て来て「お客さん、もう借金は全額お返ししましたし、これ以上騒ぐのは他のお客さんにも迷惑が掛かりますので勘弁して下さい」

「ほう、よく言うね~、あの頃は何度も返済の期日待ってやったのによ~」

そうこう言っているうちに警察がやって来た。実はかみさんが通報していたのである。

警察は本来民事不介入だがかみさんが頼み込んで来てくれたらしい。

流石に連中は帰った。

母はほっとした顔をして雄一のかみさんには頭が上がらないといった様子だった。

 

冬になり雄二が親子揃って店に来た。

寒空の中家路を急ぐ人波みに白映えするような街並みが漂っている中、雄二親子らは何の知らせもなくいきなり来たのでみんな愕いていた。

「ビックリするじゃないか、急に来るなんて」

「俺の実家なんだから別に愕く事もないだろ」

確かにその通りではある。しかし雄一は何か嫌な予感がしていた。

 

娘の沙也加はその愛くるしいまでの小さな手には動物の玩具らしきもの二つを携えている。

母が「さやちゃんまた大きくなって、お綺麗になりましたね」と笑いながら二人の孫の頭を撫でる。

真治と沙也加はその玩具を手にして楽しそうにじゃれ合っている。

母が「それ何?」と訊くと、

「サメとワニー」と実に微笑ましい笑顔で言う。

「可愛いね~」

「うん」

「でも誰かに似てるわね」

「・・・」

「そうだ、お父さん達だ!」と何か閃いたような面持ちで言い放った。

雄一は「何処が似てるんだよ」と笑う。

 

でも雄二は「確かに似てるな」と真顔で雄一の顔を見ながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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