「潮騒」を読み終えて
三島由紀夫の作品は全てが代表作とも云えるほど凄いものばかりとは思いますがこの作品を読み終えた感想です。
まず自分のような凡人極まりない若輩が三島由紀夫さんの作品について論評する事など恐れ多いのでありますが、熱烈なファンという事でご容赦願いたいと思います。
何か違う
去年は三島由紀夫没後50年という事で昔読んでた三島作品を再び読み返していたのですが、まだ読んでなかった作品の一つがこの「潮騒」でした。
ただ「潮騒」は映画化もされており余りにも有名なのでこれを読まないで三島ファンとは言えない気もしていた矢先書店に行くとちょうど置いてあったので真っ先に手に取って買いました。
あらすじとしては田舎の小島での二人の若者の恋愛物語なんですが三島の作品でも恋愛ものは結構多いと思います。
がこれまで読んで来た小説とは何かが違うような気がしました。
佐伯彰一さんも解説しているようにこの小説には三島らしい血なまぐささや烈しい描写がほとんどないのです。
それについては是非にも及ばない話とは思いますが自分が好きな三島作品といえばやはり「憂国」「奔馬」などの烈しい志のあるストーリーですね。
そういう描写がこの「潮騒」にはほとんどない !
読んでいるうちに「何時そういう描写が出て来るのか?」といった不安さえ感じたぐらいです(笑)
言い方は悪いでけどこれは三島の点数稼ぎの小説なのかとも思いました。
でも如何にも三島らしい難しい漢字に余りにも繊細、緻密な情景描写など今更ながらもこの作家の聡明さ、偉大さを感じさせられます。
この作品に限っては結末が分かるような気がしましたがそれでも読む程に引き込まれるものがあっったのも三島作品ならではではないでしょうか。
三島作品の一貫性
ただ夫婦になるまではお互い純潔であろうと言う初江の想いをしっかりと受け止め不器用で口下手ながらも一生懸命に生きる新治、人の噂なんかにはビクともしないで新治の事だけを想い続ける初江の姿にも惹かれました。
事の是非はともかく「奔馬」における飯沼勲の何があろうとも初志貫徹しようとする一貫性に類似するものを感じましたね。
だからこそいくら恋愛ものとはいえ決して温くはないのです。
寧ろ硬派な所は他の作品とは何も変わっていないというのが自分の主観で率直な感想です。
三島の作品はだいたいバッドエンドや「何で?」といった結末が多いのでこの作品は珍しくもハッピーエンドで終わりそうな事は察しがつきましたが読んでいるうちに、「頼むからバッドエンドだけは勘弁してくれよ」という気持ちになりましたね(笑)
それにしても時代背景や田舎の純粋無垢な若者の恋物語とはいえ、こういうプラトニックな恋愛は良いものですね、自分もこういう恋をしてみたかったです^^
以上、凡人の浅い論評でした。
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