人生は花鳥風月

森羅万象様々なジャンルを名もなき男が日々の心の軌跡として綴る

極道女子高生 

  二章

 

 

 朝になり登校のおり当番の若い衆シンが車の中で

「お嬢、昨晩は何処に行かれていたんですか?」と訊いて来た。

「だから何処だっていいだろ、一々干渉してんじゃねえよ」

「すいません、ですが久しぶりに暴れたくなって来ませんかね? 自分ら若い衆もみんなお嬢の喧嘩っぷりをまた見たいんですよ、相手を血の海に沈めるまで止めない夜叉の化身、紅あやさんをね」

「煽てんじゃねーよバカ、喧嘩か~」

 

学校に着いたあやは昼休みに誠二を呼び出して早速昨晩の夢の事を告げた。

あやはオープンな性格で何の躊躇いもなく夢の話を始め出した。

「分かったか、そういう具合でどういう訳だか知らねえけどお前が出て来たんだよ、どう思う?」

「どうって言われてもな~」

「はっきり言えよ、相変わらずトロい奴だな~」

「じゃあ言うよ、俺は今まで何度もあやが出て来る夢を見たよ」

「なんだって! ほんとかよ?」

「ほんとだよ」

「で、どんな内容なんだよ」

「それは・・・」

「何だよ、言えねえような事なのかよ」

「ちょっと恥ずかしいな」

「まさかお前、私と付き合ってる夢じゃねえだろうな」

「そのまさかなんだけど」

それを訊いたあやはツボに嵌ったように笑い転げた。

「私とお前が付き合ってるって、冗談キツイぜ、はっはっはー」

「そこまで笑う事ないだろ」

「いや悪いな、でも流石にそれはな~」

あやはまだ笑っていた。

 

午後からの授業中何故かあやはさっきの誠二の夢の話が気になり勉強は全く手に着かなかった。

しかし何時までも同じ事ばかり考える性分でもなかったので、あやは一計を案じる。

その日は誠二と一緒に帰る事にしたのだ。

 

その事を訊いた誠二は迷ったが断わる勇気もなく一緒に車に乗り込んだ。

車の中であやは「お前喧嘩した事あんのか?」と訊く。

すると運転していたシンが「お嬢、こんなヘタレみたいな奴が喧嘩なんかする訳ないですよ」と笑いながら言う。

「お前は黙ってろ!」

「すいません」

「したいと思わないか?」

「たまにぐらいは」

「そう来なくっちゃな、今から喧嘩しに行くからお前も参戦しろよ」

「え! 今から!」

「いいからいいから、お前がやられるような事には絶対ならねえから安心しなって」

あやに誘われるままに三人は街に繰り出す。

 

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まだ夕方ではあったが街には既に有象無象が結構戯れている。

「さあ~て、どの辺から行こうかな~」

「お嬢久しぶりですね、ゾクゾクしますよ~」

あやは取り合えずコンビニの前にたむろしていた数人の不良グループと思しき奴等に声を掛けた。

「坊ちゃん達ぃ~こんなとこで何やってんのかな~、子供は早くおうちに帰って勉強しなきゃダメだろ~」

すると一人の男が「何だてめーは!」とあやの肩に手をかけた。

あやは何時ものように「てめーじゃねえんだよ」と言いながらそいつを地面に叩き伏せる。すると他のメンバー達が一斉に襲い掛かって来た。

あやは残りの三人を瞬殺したがシンが苦戦している。

一人が放った中段蹴りがシンの鳩尾にヒットした。シンは蹲っている。

次の一撃が放たれる刹那、誠二がそいつを殴り飛ばした。

みんなは愕きその場に呆然と立ち尽くしている。

やがてパトカーのサイレンの音が聞こえて来たので敵も味方も立ち去った。

 

帰りの車の中であやは誠二を褒めそやした。

「おめーすげーじゃねえかよ! 何処で習ったんだよ」

「いや、まぐれさ」

「それにしてもカッコ良かったな~」

誠二はちょっと照れ臭くなっていた。

シンは「兄さんほんとに助かりました、さっきは生意気な事言ってすいませんでした」と礼を云う。

「おめーが一番情けねーんだよ」とあやは嘲笑う。

 

その晩あやは心地よく眠りに就いた。

 

翌日学校であやは誠二に「お前空手習わねえか?」と訊く。

「空手?」

「おう、そうしたらまぐれじゃなくもっと強くなれるぞ」

「・・・」

「お前どうせ部活動も何もしてねえんだろ? だったらやりなよ」

「そうだな~」

「よし決まりだな」

「ちょっと待てよ」

暫く間を置いてあやは「私は強い男が好きなんだ」と誠二の目を一瞬見てそう言いうと直ぐに後ろを向いた。

その言葉に誠二はちょっと引っ掛るものがあった。

 

あやは早速その手筈を整え翌日からあやの通っていた道場に二人で稽古に勤しむ日々が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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