人生は花鳥風月

森羅万象様々なジャンルを名もなき男が日々の心の軌跡として綴る

マネーの鳥 「生活費」

 

 

司会Y「その男は、嘗て華々しく事業を展開し、数億円の年商を上げていました、

   その頃の彼ならば間違いなく鳥側の席に坐っていたでしょう、

   そんな彼が何故このような場に出て来たのでしょうか? そして一体鳥達

   に何を訴えようと言うのでしょうか?」

 

生活費 

司会Y「どうぞ」

志願者「失礼します、加根名木(かねなき)正義、45歳です、宜しくお願いします」

司会Y「いくらを希望致しますか?」

加根名木「3万円です」

司会Y「その使い道は?」

加根名木「当面の生活費と、自分が再起する為の最低限の必要経費です」

 鳥達は全員揃って呆然とした面持ちで佇んでいる  😧 🤨 😓 😔

 

鳥K2「その当面の生活費と、再起する為の経費とは具体的にはどういった事

   でしょうか?」 

加根名木「はい、自分は今ホームレス生活をしていて段ボールを敷いて寝ています、

     ですからまずはまともな部屋を借りてそこに住み、そしてもう一度実業家

     として再起したいという野望を胸にここへ来ました」

鳥H「加根名木さんですか? 元々は何してたんですか?」

加根名木「5年程前までは飲食関係に物流、建設業等、様々な事業を展開し年商は

     数億円ありました」

鳥H「そんな人が何故ホームレスなんかになったんですか?」

加根名木「それは、信頼し切っていた或るパートナーに裏切られたからです」

鳥S「具体的にはどういう事をされたんですか?」

加根名木「私は社長業に専念し、営業や他の社長さん達との会議やパーティー

     明け暮れていましたから、経理経営の方は全て彼に任せていたのです、

     そのパートナーに金を根こそぎ持って行かれたという訳です」

鳥H「得てしてそういう事は良くある話なんですけどね、でも貴方甘いですよ、何故

   ちゃんと自分で管理していなかったんですか? 非常に甘いですよ」🤔

加根名木「でも信頼し切っていた人が裏切るとか予想しますか? 彼とは昵懇の仲で

     言わば義兄弟のような関係だったんです」

鳥H「という事はね、今正に貴方は自分で墓穴を掘ったん

    だけどね、この世の中に完璧な信頼関係なんか存在

    しないんですよ、信用出来るのは自分だけなんで

    す、それが分かっていない貴方にはそもそも社長

    なんか出来ないんですよ」😉

鳥S「それは言い過ぎじゃないんですか? 貴方だってホームレスをしていた事が

  あるんでしょ?」

鳥H「そんな事貴方から言われる筋合いは無いですよ、私はこの人と話してるんです

  よ、貴方だって順風満帆な人生歩んで来た訳でもないでしょうに」😤

鳥K「これは完全にふざけてますわ、だいたい3万円ぐらいで何が出来るんですか?

  それぐらいの金額でわざわざこんな所に来たんですか? サラ金や役所に行く

  べきじゃなかったんですか? 完全に場違いですよ」

加根名木「今の私では何処に行っても誰も相手してくれないんです」

鳥K「謙虚に成れよ!」😡

鳥K2「でも俺には分かる気もするな~、俺もはっきり言って死んだ親の七光りでやって

   るようなもんだからね、で、もし金出したとして再起する計画は立ててるんです

   か?」

加根名木「勿論です、まずは自分のちゃんとした住処を持ち、それからコネクション

     のある事業家に取り入って一歩づつ復活して行こうと考えています、

     これがその具体的な計画書です」

 鳥達はその資料を読み、彼の素晴らしい見識と綿密な事業計画に感銘を覚えた 😀

 

鳥S「これは素晴らしいですね、これなら十分行けると思いますよ」😀

鳥K2「うん、これは凄いよ」😀

鳥H「いや~、これは正に寝て観る夢だね、起きて見る夢じゃないよ」

鳥K「こんなもん只の紙切れですわ、これがもしうちの従

    業員ならアホンダラァ ! って言ってますわ、殴

    ってますわ」🤬

鳥S「そこまで言う事ないでしょ?」😧

鳥K「だから、まだ言ってないですから、うちの従業員なら言ってますわって話ですか

  ら」🙂

鳥S「私、出しますよ、それも多めに300万でどうでしょう?」

鳥K2「俺も出すよ、300万」

 この二人の鳥達の発言に愕いた鳥HとK、だが二人は決して出そうとはしない、彼等はあくまでも意見を変える事なく、志願者に対して厳しい視線を投げ掛ける。

鳥H「貴方、この金を手にして本当に再起する自身があるんですか? もし無いのな

  ら断って今直ぐ帰った方がいいですよ、アルバイトでも何でもして自力で復活

  する事も出来るでしょ? 我々も慈善事業でやってる訳じゃないんだから」

鳥K「こんなもん只の泥棒ですわ、話にも成りませんね」😤

司会Y「加根名木さん、どうしますか?」

加根名木「はい、頂きます」

司会Y「ではこの時点で貴方の希望金額に達したのでマネー成立です、おめでとう

   ございます」

加根名木「有り難う御座います」😆

鳥S「頑張ってね」😊  

鳥K2「頑張って」😉

加根名木「はい、本当に有り難う御座います」😭

 これは鳥達の戦いでもあった。二人の鳥の賛同、残り二人の反対。志願者は自分に賛同してくれた鳥達に報いる事が出来るのだろうか? 笑顔で見送る鳥二人に終始呆れ顔で応対していた二人の鳥。志願者はそんな鳥達を前に神妙な面持ちでスタジオを後にする。しかし志願者の表情はドアを閉めた後直ぐ様笑顔に変わっていたのだった。

 

 その後鳥達は司会Yやスタッフと共に志願者の動向を探るべく、彼がいたとされている河川敷に赴く。だがそこに彼の姿は無く、ホームレス仲間に訊いても誰も彼の存在自体知らない。そして不動産屋へ行き、彼が契約すると言っていた部屋の事を訊いても知らないと言うだけであった。

 彼は一体何処へ行ったのだろう、一行は最悪の手段としてパチンコ屋競艇場等を探索する。そこでで一行が見たものは壮絶な彼、加根名木のギャンブルに熱中する姿であった。

「行けー! 捲れー!」😁

 競艇に熱中する彼の姿はまるで別人であった。

 鳥達は彼に近づいて罵声を浴びせ掛ける。

「何してんだよお前! アパートは? 事業はどうしたんだよコラ!」😡

 加根名木は観念したのか全く抗う様子を見せない。

「すいません、あと300貸して貰えませんか? お願いします!」😅

 鳥達は言葉を失い、ただ呆然と立ち尽くしている 😔

 競艇場には憂愁の風が吹いていた。