人生は花鳥風月

森羅万象様々なジャンルを名もなき男が日々の心の軌跡として綴る

限りなく透明に近いブルー<村上龍>を読み終えて

 

 

           肌寒さ  嬉しく思う  梅雨の雨(笑) 

 

 

 いやいや、梅雨というものは本来蒸し暑いというイメージが強かったのですが、昨日辺りから少し肌寒さを感じるぐらいです。自分としては6月中旬はこれぐらいの気候で丁度良いとも思うのですが。

 これも偏に昨今の地球が暑くなり過ぎて、それを抑える為の天の優しい業(わざ)であるようにも思える所ですが、もしそうであれば尚更天に感謝しなければとその有難さを痛切に感じる所です(笑)

 という事で(どういう事やねん!?)限りなく透明に近いブルー。この超大作のレビューをしてみたいと思います。

 

あらすじ  

 舞台は東京、基地の町、福生。ここにあるアパートの一室、通称ハウスで主人公リュウや複数の男女がクスリ、LSD、セックス、暴力、兵士との交流などに明け暮れ生活している。

 明日、何か変わったことがおこるわけでも、何かを探していたり、期待しているわけでもない。リュウは仲間達の行為を客観的に見続け、彼らはハウスを中心にただただ荒廃していく。

 そしていつの間にかハウスからは仲間達は去っていき、リュウの目にはいつか見た幻覚が鳥として見えた。 

 

感想  

 勿論この感想はあくまでも主観なのですが、まずこの本を読み出した時物凄い抵抗を感じました。それは過激な描写が多いという事です。過激な描写自体は自分も結構好きな方ですが、それが単に暴力や思考、思想という事ではなく、性的な意味での過激さ、薬物の過激さが露骨に表現されているという点ですね。

 そして実に不思議な点、主人公のリュウと同棲しているリリーの出現するシーンが極めて少ないという事です。物語は二人の同棲生活から始まっている訳ですから、自分はてっきりこの二人の人生がメインで描かれているものだと思い込んでいました。それが中盤ではリリーは殆ど出て来ず、他の仲間達と遊んでいるだけです。リリーは名前を変えてこの中に潜んでいるのかと思ったぐらいです(笑)

 でもリリーは実際にリュウ以外の他のメンバーと絡むシーンは一度も無いのです。そんな人を登場させる意味などあるのかとも思ったぐらいです。

 そこがトーシローの浅はかさなんですよね。それだけ出現率の低いリリーであるにも関わらず他のメンバーとも差異なく、寧ろそれ以上の存在感を感じる、ここがポイントであると思いますね。

 このリリーも主人公のリュウもオキナワもヨシヤマもカズオも、レイ子もケイもモコも全員がジャンキーなんですよね。それに加えて過激な性描写が目立つと。カッコつける訳ではありませんが自分のようなプラトニックな恋愛が好きな人間にはキツイ内容でしたね。自分の好きな三島由紀夫の作品にも過激な描写は結構多くて、生殺与奪に関わるシーンも過激である事には何ら違いはありません。ですが性的な意味での過激さは殆ど無いと思われます。これは単に個人の好き嫌いだけの話かもしれませんが、自分が潔癖なだけなのでしょうか。

  この作品は村上龍さんの実体験を基にしているそうですが、ドラッグはコカインやLSDの他、ヘロインまで出て来ます。作者のドラッグ経験を干渉するつもりは全くありませんが、作家はよく実体験や取材を基にして作品を作って行くと言われていて、だからこそここまでの精妙な描写が出来るとも思われるのですが、何れにしてもこのドラッグや性、暴力等の過激な描写は実に現実味を帯びていて凄いと思いますね。

 そして最期のリリーが家を出て行くシーン。ここでリュウは幻覚を見て鳥を殺さなければならないと狂気じみた事を言ってリリーを困らせます。これはリュウがドラッグのやり過ぎで幻想の世界に身を窶しているようにも見えますが、自分としてはそうではなく、ドラッグに溺れている内に本当の自分、自分の中に眠る真の自分、身体の奥底に眠っていた普段は表に出て来ない怖ろしいまでの純粋な心が現れたように感じました。

 そう思うと一層この作品の人間描写、心理描写の凄まじさを痛感する所です。

 

最後に 

 それにしてもこの作品は村上龍さんのデビュー作にして代表作でもある。そして芥川賞受賞作品と。天才といか言いようがないですね。本当に凄いです。

 自分は小説を読む時は不遜にも常に三島由紀夫の作品と比べてしまう癖があるのですが、この作品は本当に凄いと思います。それでもやはり三島が好きなのですが。これはやはり自分の考え方が硬いのかもしれませんね。もっと色んな方の小説も読まないとダメな気もします。

 

 という事で以上、何時も通りの拙いレビューでした。また土曜日恒例の銭湯に行って来ます^^

 自分の拙い小説の方も宜しくお願い致します 😉