人生は花鳥風月

森羅万象様々なジャンルを名もなき男が日々の心の軌跡として綴る

マネーの鳥 「立候補」

 

司会Y「その男は嘗てぇ、一瞬だけ芸能界に身を置いていた事があります。ですが余りにも短い期間だったので覚えている方は殆どいないと言っても良いでしょう。でもどうしても日の目を浴びたい、という想いから無謀にも大胆な発想を思い付きました。今宵彼はどんな事を鳥達に訴えるのでしょうか」

 

立候補

志願者「初めまして、甲斐革雄(かいかくお)です、宜しくお願いします」

司会Y「いくら希望しますか?」

甲斐「10億円を希望致します」

司会Y「そのお金の使い道は?」

甲斐「次の衆議院選挙に立候補する為の供託金とその他諸々の政治資金です」

 志願者は全く物怖じする様子もなく、あくまでも毅然とした態度で真っすぐ前を向き椅子に坐っている。鳥達は呆然として志願者の顔を眺める 😕😦🤨

 

鳥H「貴方ぁ~甲斐さんですか、何故選挙に立候補しようと思ったんですか?」

甲斐「その前にまずこちらから伺います、本当にお金を出す気があるんですか!?

   もし無いのであれば、これ以上は何も話す気になれません」

  鳥Hは呆れて物が言えない様子である 😞   

鳥K「これは完全にふざけてますわぁ~、話になりませんわ」

鳥N「貴方はここに何をしに来たんですか? 我々を愚弄する為に来たんですか?」

甲斐「そんなつもりはありません、私はお金が欲しくて、亦自分への協力者を募る為

   にここへ来ました、それではダメですか?」

鳥K「舐めとんかお前? 謙虚に成れよ!」🤬

甲斐「別に舐めてなんかいません、正直な気持ちです」🙂

鳥T「ま~Kさん、そう昂奮せずにもうちょっと話を訊いてみましょうよ、でもね甲斐

  さん、別に偉ぶる訳じゃないですけど一応我々はお金を出す立場なんですよ、

  だからもう少しでも可愛げが無ければ出そうという気にはなれないんですよね」

甲斐「分かりました、でも自分は完全に遜った態度を取る気にはなれませんので、

   鳥さん達と四分六の関係で行かせて貰います」

鳥K「何言っとんやお前は?」

鳥T「まあまあKさん、甲斐さんもそれでいいから落ち着いて話して下さい」

鳥N「それで~、その10億という大金は何故必要なんですか? 供託金だけならそん

  なに要らないでしょ」

甲斐「はい、初めに言わせて頂いたようにその他諸々の政治資金も合わせてという事

   です」

鳥H「だからね甲斐さん、その諸々とか漠然とした話では誰も金を出さないのよ、

  もっと具体的に話してくれないと、内訳、詳細はどうなってんの?」

甲斐「分かりました、じゃああこれを読んで下さいますか?」

 彼はそう言って徐に書類を取り出し鳥達に手渡した。鳥達はそれを真剣な眼差しで読み始める 🤨 🧐

鳥N「この献上金というのはどういうお金ですか? めちゃくちゃ多いですけど?」

甲斐「それは要するに裏金です」

鳥N「裏金とは具体的には?」

甲斐「はい、賄賂です」

鳥K「ほんまに舐めてんのか? こんなもんうちの従業員         

  ならあほんだらって言いますわ、殴ってますわ」😤

鳥H「それで貴方の経歴はどうなのよ? 一時芸能界にもいたんだって?」

甲斐「はい、私は中卒でフリーターをしながらプラプラしていました、そして

   華々しく芸能界に入り一時活躍しましたが世間の愚民達は自分の面白さが

   いまいち分からなかったみたいで、その後干されてしまい現状に至った訳です」

鳥H「で、私は全然知らないけど知名度はそこそこあるの?」

甲斐「あります、その功もあってもう既に何人もの大物代議士と話を付けています」

鳥N「話とは裏金を渡すという話ですか?」

甲斐「そうです、ですから後は金だけなんです」

 鳥達は余りの飛躍した話に驚愕し言葉を失っていた 😞

 

鳥H「それで仮に貴方が代議士になったとして俺達にはどんな見返りがあるの?」

甲斐「それは計り知れません、今の何倍もの資産家になれる事は間違いないです」

鳥H「その根拠は?」

甲斐「それは私の名前が示すように大改革をするからです」

鳥H「どんな改革?」

甲斐「この日本という国に心を取り戻させる改革です」

司会Y「あのね、横から悪いんだけど、同じ芸能界に身を置いていた者として俺は

   ムカついて仕方ないよ、さっきから黙って訊いてたけど、お前の言ってる事は

   世の中舐め切ってるとしか思えないんだよ、番組じゃなかったらお前を

   殴ってる所だよ!」

甲斐「たとえ殴られても実現させなければならないのです」

鳥N「もう帰っていいよ、話にならないよ」

鳥H「いや、Nさんひょっとしたらこの人が言ってる事は正しいかも知れないよ」

鳥K「俺もそういう気になって来たわ」

鳥T「もうちょっと具体的に話してくれませんか?」

甲斐「はい、私が掲げているマニフェストと改革の内容は日本、いや世界から金を

   無くす事なんです、そしてあらゆる文化文明を潰してしまいます、つまりは

   原始時代に戻そうという話なんです」

鳥H「感動しました、実は俺ももう金金金の社会はこりごりだったんだよ、貴方の

   心が分かったよ、よし! 俺は5億出すよ!」

 この鳥Hの思わぬ発言に依って他の鳥達もみんな賛同し残りの金を出資した。

司会Y「この時点で貴方の希望額に達しましたのでマネー成立です、おめでとう

    ございます、いや~俺も感動したよ、頑張ってね」^^

 

 その後、甲斐は手にした10億円という大金を持って行方を眩ました。鳥達は当然挙って被害届けを出し、甲斐は警察の総力を挙げた捜査から逃げ回っていたのであった。