人生は花鳥風月

森羅万象様々なジャンルを名もなき男が日々の心の軌跡として綴る

2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

約定の蜃気楼  最終話

突如姿を現し、いきなり発言を試みようとするレーテを司祭は制する。 「レーテや、およしなさい」 だが他の長達の寛大な計らいに依って発言を許されたレーテは、携えて来たものを皆の前に出し、こう言いだすのだった。 「まずこの籠に入れられた二匹の蝶と二…

約定の蜃気楼  十九話

身体が重い。まるで鉛でも付けられたように重く感じる。湖の奥深くまで沈められた真人の身体はもはや自力では浮かび上がる事は出来ないだろう。こうなれば反省もクソもない。観念した真人は何も抗わず何も考えずに、ただ死を待つ。 すると何も考えていなかっ…

約定の蜃気楼  十八話

信じていた、尊敬していた人にさえも裏切られる。確かに長い人生に於いては無い話でも無い。でも見聞きした事はあってもいざそれが自分自身に降りかかって来た場合、人はどういう心境になるのだろうか。 今回の事件の犯人は恐らくあいつらだ。悪い勘ほど当た…

約定の蜃気楼  十七話

真人の叫び声に愕いた誰かが通報したのだろうか。夜半の公園には大勢の警察官が駆け付け、辺りは騒然とした様相を呈して来る。真人も目撃者として聴取を受けた。そんな中、警察達は口々に言う事があった。 「倉科の英さんとうとう仏さんになっちまったか」 …

約定の蜃気楼  十六話

「覚えておけよっ!」 捨て台詞を吐いて逃げるチンピラどもの姿は滑稽であった。結局二人がした事は連中を叩きのめしただけで食事の代金を払わせるまでには至らなかった。それより真人が気になった事は瞳の力だった。彼は正直に真正面からその事を訊く。 「…

約定の蜃気楼  十五話

朝目が覚めた時、瞳は後悔していた。その暗鬱な表情の意味する所とは何なのだろう。それに引き換え明朗な面持ちで窓を開け外の景色を眺める真人。 今日も燦然と輝く陽射しは眩しく、その下で元気良く飛び回る雀達。その可愛い鳴き声はホテルの7階までも十分…

約定の蜃気楼  十四話

湖からワープして来たその場所は正に大都会そのものであった。二人の眼前に拡がる夥しいまでの人の群れとビルの群れ。行きかう人々はまるでロボットのように同じような恰好、同じような無表情、同じような歩調で周りには一切目もくれず、無関心を装ったまま…

今週のお題  ~100万円に対する想い

今週のお題「100万円あったら」 軒下に 日陰求める 雀達(笑) いやいや、夏はもう目の前までやって来たという陽気ですね。この調子だと何時蝉が啼き出しても不思議ではないような気もします。こんな時期だからこそ心を落ち着かせてブログ制作に勤しむ必要が…

約定の蜃気楼  十三話

二人が舞い戻った夕暮れ時の湖には珍しく人だかりが出来ていた。霧が晴れているとはいえ、このような幻想的な場所に人が群がっている光景は何ともぎこちなく感じる。 一体ここで何が始まるのだろう。真人はそう思いながらも敢えて訊こうとはしない。それは虎…

約定の蜃気楼  十二話

久しぶりに会った瞳の珍しい仕種に愕いた真人であったが、彼は気の向くままに彼女を自分の身体で休ませてやり、優しく髪を撫で互いにその切なさを共有していた。 その後こんな地獄道に長居は無用と感じた真人は瞳の身体を起こし、取り合えず歩き出した。二人…

三島由紀夫の魅力とは

日の長さ 夜が恋しい 天邪鬼(笑) 確かに日が長い事は有難い事で感謝しなければならないと思いますが、なるべく人目を避けて生活している自分としては早く夜になって欲しいような気もしないではありません。かといって冬になり余り日が短か過ぎるのもどうか…

約定の蜃気楼  十一話

「そうです、そのままじっとしていなさい、餓鬼達は決して貴方の身体に触れる事は出来ません、何も怖れる事はありません」 この神々しいまでの威厳に充ちた綺麗な声の主は一体何者なのだろうか。真人はその指示に従い、身体を仰向けにして微動だにせずその場…

約定の蜃気楼  十話

西軍の本陣から数十分歩いただろうか。遙かに霞んでいた敵本陣にようやく辿り着いた一行は快く迎え入れられ、手厚いもてなしを受けた。取り合えずと一献授かった真人は悠長に構えているなと感心しながら酒を飲んでいた。 敵総大将の榊原泰幸はその恰幅の良い…

約定の蜃気楼  九話

何時ものように朗らかな表情で真人を見つめる瞳ではあったが、今日は何処となく少し神妙な風にも感じられる。瞳はその長い髪を荒野の強風に靡かせながら語り掛けて来た。 「これで3つの合格認定を頂いたのね、貴方なら次の試練にも耐えられると思うわ、でも…

限りなく透明に近いブルー<村上龍>を読み終えて

肌寒さ 嬉しく思う 梅雨の雨(笑) いやいや、梅雨というものは本来蒸し暑いというイメージが強かったのですが、昨日辺りから少し肌寒さを感じるぐらいです。自分としては6月中旬はこれぐらいの気候で丁度良いとも思うのですが。 これも偏に昨今の地球が暑く…

約定の蜃気楼  八話

血と臓物とは正にこの事か。巨大な鰐に飲み込まれた真人の眼前には見るも恐ろしい闇の世界が拡がっていた。ここが胃袋なのか、胃粘液の強力な粘着きに依って手足の動きを封じられた真人には何ら抗う術が無かった。だがこのままでは何れ死んでしまう。真人は…

約定の蜃気楼  七話

瞳は無言のまま真人の顔を凝視し、射貫くような鋭い眼光で彼の両目を見つめ出した。そんな彼女の姿に動じた真人は不甲斐なくも瞳と接吻する覚悟をするのだった。しかし瞳は何時になってもその目を閉じようとはしない。寧ろ、いやに攻撃的なその様子は真人を…

約定の蜃気楼  六話

就寝前の祈祷を終えた真人は部屋に戻り床に就く。静かな修道院は彼を安眠させるのに十分だった。熟睡中の真人ではあったが久しぶりに夢の世界に誘われる。それは彼の今までの人生を振り返るような過去の経験が物語る夢であった。 真人は高校生の頃から交際し…

約定の蜃気楼  五話

窓外に見える外の風景は既に日が暮れかけ、一面に広がる野の草花は光の加減か紫色にも見える。そして少し強めに吹いて来た風は真人の逸る気持ちを一層駆り立てるような勢いがあった。 真人は指示されたように取り合えず料理をテーブルに運んで食事の支度を整…

RIZIN28 感想  ~無常感  

移り行く 夜は儚くも 無常かな(笑) おはようございます^^ いや~本当に月日の経つ早さには愕くばかりですね。もはや6月も中旬、あと半月もすれば7月、2ヶ月後は盆。そして盆が過ぎればまた正月と。 何処かで時を止めたいという衝動に駆られる事もありま…

約定の蜃気楼  四話

晴れ渡った蒼い空一面には無数のひつじ雲がまるで天かける星々のように果てしなく連なっており、その下には見渡す限りの緑の広野が拡がっていて、遙か彼方には微かに海までが見える。 草を食べながら悠々と歩く牛の姿や、香ばしい土の匂い、風に優しく揺らめ…

約定の蜃気楼  三話

相変わらず朗らかな瞳ではあったが湖を後にする時、何やら意味深な事を告げるのだった。 「あ、それとね、この湖は底なし沼なの、通称地獄の沼って言われてるわ、でも底まで辿り着く事が出来たら元の世界に帰れるという言い伝えもあるの、それが出来た人は今…

約定の蜃気楼  二話

翌朝目を覚ました真人は環境の違いに仰天した。天井がある、壁がある、床がある、窓がある、そして自分は布団に寝ている。ここは一体何処なんだ、昨日湖で会った老人はその後何処へ、訳が分からない。窓外に見える景色からしても恐らくここは家の2階であろう…

約定の蜃気楼  一話

あれからもうどのくらいの月日が経ったのだろう、幾日歩き続けていたのだろう。最期に物を食べたのは何時だったろう、昨日水を飲んだ気もする。でも大して空腹感もない。自分でも何がどうなってしまったのか分からない。唯一はっきり覚えている事といえば自…

まほろばの月  最終章

初志貫徹。今正に阿弥の本懐は成し遂げられた。積年の恨みであった目黒は阿弥本人の手に依って葬られ、ヤクザの大親分待鳥さえも抹殺された。この事は或る意味素晴らしい功績で、輝夜一家は一躍ヒーローになったといっても過言ではないような気もする。 まだ…

まほろばの月  二十六章

決行の刻(とき)は来た。午後7時過ぎ、既に日も暮れ天高く姿を現した半月を眺めながら仕事に赴く。一意専心。一行はただ阿弥が本懐を遂げる為のみにその身を賭して動き出すのであった。 手筈通り一家の者達を二手に分け、まずは山友会の待鳥宅を襲う組は椎…

主観性と客観性、二元論と多元論

風吹けば 心安らぐ 初夏の空(笑) いやいや、暑くなりましたね まだ6月上旬のこの時期に初夏というワードを用いる事は不本意ではありますが、この暑さでは致し方ないかなと思う次第です。せめて風が吹いてくれれば少しは涼しくなるのですが。自分は団扇で…

まほろばの月  二十五章

一殺多生。美子の死と、英二の遺言も空しく絶縁された清吾の処遇は一家にとって本当に功を奏するのだろうか。だが清吾は阿弥の事を全く恨みになど思っていない、それどころか阿弥が本懐を遂げる事を祈る清吾の想いは、波子や阿弥本人にも伝わって来るぐらい…

武神 <韓流時代劇>

キム・ジュンは何故イム・ヨンなる者を己が跡継ぎに考えていたのでしょうか。確かに彼には比類なき才能があったかもしれませんが、あくまでも物語の後半から知り合ったばかりの彼にそこまで惹かれるものでもあったのでしょうか。 結果二人は袂を分かつ事にな…

まほろばの月  二十四章

翌日、椎名は電光石火の如く迅速に仕事を終え、阿弥の下に吉報を齎す。彼は顔がボコボコに腫れあがった男を伴って勢いよく隠れ家に入って来た。 「阿弥よ、こいつが竜太を察に売ったんだよ、俺の方である程度は〆ておいたが、後はやりたいようにやってくれ」…