マネーの鳥 「どこでもドア」
司会 Y「その男は、幼少の頃からドラえもんが好きで好きで仕方なかったと言います、
そして、成れるものならドラえもんに成りたいとさえ思っています、この世間
の一般常識から乖離したような考え方は稚拙で愚かなのでしょうか? それで
も男は夢を捨てる事は出来ないと言い放ちます」
どこでもドア
志願者「何処でも行太郎、33歳です、宜しくお願いします」
司会Y「いくらを希望しますか?」
志願者「30億円です」
司会Y「その使い道は?」
志願者「どこでもドアの製造費です」
鳥達は怪訝そうな表情を泛べ志願者の顔を凝視する 🤨 😕 😦
だが志願者はあくまでも毅然とした態度を崩さない 🙂
鳥N「その~どこでもドアというのは何なのですか?」
行太郎「アニメのドラえもんに出て来る魔法のようなドアで、それを使えば一瞬に
して何処へでも行けるという道具です」
鳥K「これは完全にふざけてますわぁ、え~」😤
鳥T「私は必ずしもオタク文化を否定するものでは無いんですけどね、余りにも飛躍
した話ではないですか?」
行太郎「自分はそうは思っていません、夢は叶うんです、いや叶えるものなんです!」
鳥H「貴方、行太郎さんですか、それは寝て観る夢なんですよ、起きてる時に見る夢
では無いですよね、貴方33なんでしょ、幼稚過ぎるんですよ、そんな事言って
たら貴方恥かくだけですよ」😊
行太郎「でもドラえもんの作者の藤子不二雄さんもいい歳ですよね」
鳥H「それはあくまでも漫画やアニメの世界でしょ、それを真に受けてどうする
んですか~、貴方みたいな人はね、非常に気持ち悪いですよ」🥶
鳥N「30億円という莫大な金額ですけど、きちんと見積もりはしたんですか?」
行太郎「はい、これが事業計画の詳細です」
鳥達に手渡された資料は表紙にどこでもドアの画と、開発費15億円、材料費15億円とだけ記された至ってシンプルな計画書であった。
鳥K「これ何なんですか? こんなもん単なるお絵描きとメモじゃないですか? こん
なもん持ってよくここに来れましたね、恥ずかしくて生きて行けませんよ」
行太郎「それ以上は企業秘密になりますので・・・・・・」
鳥K「謙虚になれよ! これうちの従業員なら殴って
ますわ、アホンダラァ! って言ってますわ」🤬
鳥N「まぁKさん、そう昂奮なさらないで」
鳥K「まだ言ってませんので、もしうちの従業員なら言ってますわって話ですから」
鳥T「で、その開発が成功するって根拠は何処にあるの?」
行太郎「さっき言いました自分の夢に賛同してくれた多数の科学者のお墨付きです」
鳥T「お墨付きと言われてもね~」🤔
行太郎「でも考えてみて下さい、もしこれが成功すれば一瞬にして何処へでも行ける
んですよ、あらゆる交通機関は不要になります、正に夢のような世界じゃ
ないですか、こんな素晴らしい事はないと思いますけどね」
鳥H「貴方今何やってるんですか?」
行太郎「今はフリーターですが経営のノウハウは学びました」
鳥H「どんな仕事をして来て、どんな事を学んだ?」
行太郎「はい、コンビニの店員や新聞配達、パチンコ屋店員に警備員、経営学は
今まで世話になった店長や本から学びました」
鳥H「でもね行太郎さん、30億円という金額は私らの年商ぐらいの額なんですよ、
それをこんな簡単な計画書と寝て観る夢だけで語られても誰も賛同なんて
しませんよ、私も今全国に200店舗展開していて、色んな学者達と接する機会
もありますけどね、こんな話を訊いた事は一度もありません、取り合えずもっと
きちんとした計画書とこの30億円の内訳、これを説明出来なければ話に
なりませんよ、経営を学んだんでしょ?」
行太郎「学んだと言っても自分が直接経営にタッチする訳じゃありませんし、他に
ちゃんとしたブレーンがいますから、経営の方はそちらに任せるとして、
自分がする事はあくまでも夢、アイデアを出す事なんですよ」
鳥H「という事はね、今正に貴方ご自分で墓穴を掘った
訳なんですよ」^^
行太郎「えっ?」😮
鳥H「お金の事をもっと学ばない事には社長になんて成れないのよ、貴方みたな何も
知らない人こんな大金を握らせたらまちゃくちゃになってしまいますよ、
貴方みたいな者に一体何が出来るというんですか? 私は笑いを堪えるのが
やっとなんですよ、もっともっと勉強したから出直して下さい」😊
行太郎「ちょっと待って下さい! 皆さん、この計画実は外国では既に始まっている
んですよ、でも外国では戦争の武器に使われる危険性があるという事で
自分のブレーンでもある学者の一人がそこを抜け出して、自分の味方に
回ってくれたんです、日本が一番安全だという事で」
司会Y「それは本当なんですか?」
行太郎「勿論ほんとの話です、なんなら今から電話してその学者に取り次ぎ
ましょうか? その学者は皆さんもご存じのノーベル賞受賞者の○○博士
ですよ」
一同騒然として慌て出す。そんな中、行太郎は電話を掛け司会Yに確認させた。
司会Y「確かに○○さんでした、この計画も彼と行太郎さんに依るものだそうです」
鳥K「私出しますわ! 皆さん共同出資しましょうや!」
😃
鳥N「念を押しておきますけど、本当に本当なんでしょうね?」
行太郎「勿論本当です!」
鳥N「分かりました、じゃあ出しましょう」
鳥T「私も出します」
鳥H「致し方ありませんね、出しましょう!」
行太郎「皆さん有り難う御座います! 絶体に成功させてみせます!」
こうして鳥は一人頭7億5000万円づつを出し合い、30億円という巨額な資金を手にした行太郎は鳥達と厚く手を握り感謝の意を表した。
司会Y「この時点で貴方の希望金額に到達しましたのでマネー成立です、おめでとう
ございます」
行太郎「有り難う御座います!」😃
鳥達「一緒に頑張りましょう!」😃
行太郎「はい! 頑張ります!」😃
その後行太郎を始めとする一行は直ぐ様開発に取り掛かる。郊外にある施設には学者は無論、その道のスペシャリストであるエンジニアや歴々たる鳥達、司会のY、番組スタッフまでもが挙って姿を見せていた。正に他に類を見ない夢の企画。これに胸を躍らせるのはもはや行太郎だけではない。日本の未来が掛かっているのだ。研究、開発は夜を徹して行われていた。
だが数日後、怪しげな研究が行われているとの通報があり計画は一旦ストップした。その施設には様々な化学薬品、資材、機械等が用いられており、これら全てが違法と判断した裁判所の判決に依って関係者は悉く捜査機関に捕まってしまった。
獄に繋がれた鳥達は何を想うのだろうか。あの勇猛果敢な鳥達がこれぐらいの事で諦めるとは考えたくない気もする。