マネーの鳥 「真・生活代行サービス」
司会Y「その男は、とにかく怠け者で何もしたくない、という己の欠点を逆手に取った逆転の発想から或るビジネスを思い付いたと言います、そんな怠け者にビジネスなど出来る筈が無い、という考え方は浅はかなのでしょうか? 自信漲るその表情には私も何か惹かれるものがあります、男は鳥達に何を訴えようと言うのでしょうか?」
真・生活代行サービス
志願者「失礼します、一生寝太郎、27歳です」🙂
司会Y「寝太郎さん、いくら希望しますか?」
寝太郎「3852万9325円です」
司会Y「その使い道は?」
寝太郎「真・生活代行サービスの開業資金です」😉
鳥達は何時になく興味津々な表情で志願者の顔を眺めているが、鋭い眼差しながらも何処か呆れたような心境は自ずと伝わっては来る 😦 🤨 😕
鳥T「その真・生活代行サービスていうのはどういうサービスですか? 家事代行
サービスではないのですか?」
寝太郎「はい、それは書いて字の如く.....」
鳥T「読んで字の如くね」
寝太郎「あ、すいません、読んで字の如く家事も手伝いますが、生活そのものを代行
するサービスです」
鳥T「もう少し具体的に教えて頂けませんか?」
寝太郎「はい、まずは家事、これは説明するまでもないと思うのですが、生活代行
というのは依頼人の一日或いは毎日に於ける起床から就寝までの様々な
生活、例えば食事から仕事、買い物、レジャー、洗面、入浴、排泄に至る
まで全ての行為、行動、果ては人生そのものを代わって生きて行く、
といったサービスです」
鳥T「なるほどね」🤔
鳥K「今回の志願者も完全にふざけてますわ~、え~」😤
寝太郎「別にふざけてなんかいません」🙂
鳥K「謙虚に成れよ!」😡
鳥N「ま~ま~Kさん、で、その3800万何円という端数は何なんですか? えらく
細かい数字まで算出してるみたいですけど」
寝太郎「これはおおよそでは失礼だと思い入念に試算した結果の数値です」
鳥N「なるほど、それは立派だね」😒
鳥H「寝太郎さんですか、貴方は何故こんな事をしようと思ったの?」
寝太郎「自分はとにかく怠け者で今まで完全なナマクラ人生を歩んで来ました、
ですから世の中には自分のような人も多いと思い、それならば逆に
自分がそういう方達の代わりに動いてあげようという逆転の発想から
思いつきました、それは自分自身の為にも成ると思いましたし」
鳥H「私はね、貴方の言ってる意味がよ~く分からんの
ですよ、さっぱり分からん」🤨
鳥N「要は依頼人の人生そのものを代行するって話でしょ?」
寝太郎「そういう事です」
鳥H「それにしてもね、例えば私は今社長をしてますが、貴方は私の代わりが出来る
のですか? そんな能力があるのですか? 貴方みたいな者に?」
寝太郎「あります、というか誰にでもあるのです」
鳥H「何で誰でも出来るのですか? さっぱり分かりませんよ」
寝太郎「それは簡単な話です、社長自らが自分を指示してくれれば良いだけの話です」
鳥H「は?」😮
寝太郎「依頼人が全てを指示する訳です、自分が代わりに行動すると、そうすれば
依頼人は家で寝てるだけでいいのです、楽が出来るんですよ、勿論自分で
動きたくなったらまた代わります、それだけの話なんです」
鳥H「それでビジネスになると思ってるの? 浅いな~人間が浅い」😞
鳥T「でも私は結構行けるんじゃないかと思いますけどね~、実はね、私も元々は
凄い怠け者だったんですよ、でも楽して儲けようと思った事は一度も
ありません、だけど貴方のビジネスは楽では無いですもんね、行けるんじゃ
ないかな~」
鳥K「取り合えず事業計画書を見せて貰えますか?」
寝太郎「はい、宜しくお願いします」
鳥達は手渡されたたった2枚の計画書に目を通す 🙁 🧐 🤔
鳥K「この借入金返済額1000万とマイホーム購入資金2500万、お小遣い300万、
というのは何ですか?」
寝太郎「そのままなのですが、今ある借金の額とマイホームを買うのに必要な額、
そして最低限の小遣いですね」🙂
鳥K「あんた、ほんまに舐めてんの? こんなもんうちの
従業員やったらアホンダラァーーー!
って言いますわ!」🤬
志願者には一瞬戦慄が走ったが、まだ自分に対しての罵倒では無い事を知っていた彼は平静を装い、毅然とした態度で鳥達に相対する 🙂
鳥K「こんな紙切れよう持って来れたな~、恥ずかしくて街歩かれへんで、うちの
従業員やったら殴ってますよ、頭おかしいんちゃう?」😧
鳥T「何故俺達が貴方の借金返済やマイホームまで面倒見てやらなきゃいけないの?」
寝太郎「それはまず自分自身が借金を完済して綺麗な状態になり、マイホームを
建てて一人前の人間にならない事には依頼人の願いに応える事が出来ない
からです、相手は自分より金持ちな場合も多いでしょう、そうなると
自分のような貧乏人では話にならないでしょう、最低限の地位は必要
なのですよ」
鳥H「貴方はビジネスというものが何なのか全然分かってないね、貴方みたいな
トーシローにこんな大金掴ませたら大変な事になりますよ、貴方はお金の価値
ってものが全く分かってないね」🤔
寝太郎「一応分かっているつもりですけど」
鳥H「じゃあ言ってみなさい、お金の価値、お金の儲け方を」🤔
寝太郎「価値は...」
鳥H「違う、全然分かってないよ」
寝太郎「まだ何も言ってませんけど?」
鳥H「何も分かってないですよ、考え方なんですよ、
考え方、それだけなんですよ」😇
鳥K「話になりまへんわ」😤
寝太郎「ちょと待って下さい! まだ言いたい事があるんです!」😲
鳥N「言ってみなさい」
寝太郎「私の祖父はこの前死んでしまったのですが、晩年は寝たきりでした、
その祖父は何時も床に就いた状態で言っていました、『わしも身体さえ丈夫
なら行きたい所は一杯あるしやりたい事も一杯あるんじゃ、まだまだ死に
たくはないんじゃよ、じゃがこの身体じゃ、今のわしには何も出来ん、
だからわしに代わって動いてくれる者がいたらどんなに倖せか、
もはやわしにはトイレに行って気張る事すら出来ん、じゃからわしの代わりに
排泄をして勢いのある排水の音を聴くだけでも嬉しいんじゃ、家事なんか
どうだっていいんじゃよ、わしの代わりになって生きてくれる、遊んで
くれる、その楽しそうな話を訊くだけで満足なんじゃよぉ~』😔
祖父はそう言って死んで行きました、だから自分は祖父にしてあげられ
なかった事を今生きている人達にしてあげたいのです!」
これには流石の鳥Kも感動したようで頬には涙を泛べている。他の鳥達も同様、司会Yにスタッフまでもが感銘を覚えスタジオ内は憂愁の色に包まれていた。そんな中、一人の鳥が勇ましくも優しい笑みを浮かべて覚悟の声を上げる。
鳥K「私出しますわ! こうなったらなんぼでも出し
ますわー!」😢😃
鳥H「私も出します」😢
鳥N「私も」😢
鳥T「私も!」😢
こうなればもはや歯止めが効かない、鳥達は端数などどうでも良いからと言って希望額を大きく上回る合計1億円もの大金を出資した。
司会Y「この時点で貴方の希望額に達しましたので、いやそれを大きく上回りました
のでマネー成立です、おもでとう御座います」
寝太郎「有り難う御座います、有り難う御座います」😭
鳥「頑張ってね」😉
寝太郎「はい、頑張ります」😂
鳥達の祝福に応えるべく寝太郎は起業し、様々な代行サービスに手を着けて行った。始めのうちはヤル気になってみるみるうちに金が儲かる。こんなボロい商売は無いと思い仕事に精を出す。
だがその後、生来怠け者の寝太郎はアホらしくなって事業を投げ出し残りの数千万円を持って逃亡してしまった。勿論借金を返済していなければマイホームなども建ててはいない。
鳥達はまたしても無能極まりない志願者に投資してしまった己が短慮を恥じていたのだった.......。