人生は花鳥風月

森羅万象様々なジャンルを名もなき男が日々の心の軌跡として綴る

サメとワニ

 二章  ─青春の黄昏れ─

 

 二人共中学を卒業すれば直ぐにでも就職して母を楽にさせる事ばかりを考えていたが、流石に今の時代高校ぐらいは出てないと恰好がつかないという母自身の思いもあり二人は高校に進学する。

 

季節は春、美しい桜の花が咲き乱れて公園や街路は今まで冬眠でもしていたのかというような夥しい数の人々で溢れかえっている。正に春爛漫、花満開という光景であった。

 

雄一は早や高校3年生、雄二は1年生。

もはや二人共ボーイスカウトの活動にはほとんど顔を出さずに学業に専念していた。

或る日廊下を歩いていたら向こうから1年生の奴等が数人で歩いて来る。すれ違い様その中の一人と肩がぶつかる。雄一は「喧嘩売ってんのか?」と啖呵を切る。

すると相手は「は? お前誰?」とすかして来る。

「1年のくせにいきなり調子乗ってんのか」と言い有無を言わさずそいつを叩きのめした。

雄一は相変わらずの喧嘩好きな性格が治ってくて高校でもこんな日々が続いていた。

その事は生徒同士の喧嘩という事で一応事なきを得る。

他方雄二はといえばこっちも相変わらずのお人好しでいくら同級生であるとはいえ何を言われても平気な性格で高校に進学してからも友人は多かった。

 

日曜日に兄弟二人と以前からの仲間達数人で魚釣りに出かけた。

雄一も元々釣りは好きな方で真面目に釣りに精を出して何十疋という魚を釣り上げていた。雄一らはあまり釣りには執着せず遊び回っている。その様子を見る。

「雄、こっちだよ、何してんだよノロマだな~」

「ほらほらこっちこっち」

「早く何か釣れよ~」

「そんな事言われてもな~」

等と雄二は弄られていた。

雄一は見るに見かねて

「お前ら普通に釣りしろよ」と言ったがまるで聞く耳を持たない。

腹に据えかねてそいつらを殴った。

「いい加減にしろよ」

「それ以上雄二を揶揄ったらただでは済まさないぞ」とカマシ上げる。

すると雄二の友人らは「すいませんでした」と謝っては来たものの「お前の兄貴恐いな、冗談も通じないのか」などと陰口を叩いていた。

雄一もそれ以上には何もしなかった。

 

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家に帰り釣って来た魚を母に料理して貰った。

鯵と鯖が数十匹、15sm~30smぐらいのカレイが4枚、メバルが数匹と防波堤釣りの割には結構大漁だったので母も驚いている。

母は近所にも数匹お裾分けをして残ったカレイを煮付けてくれた。

みんな笑顔で食卓へ向かう、カレイは身もふっくらして食べ応えがあり幸せな時間がそこにはあった。

「雄二美味しかったな、また今度行こうな」

「いいけど今度は俺の友達に何もしないでよ」

「何言ってんだよ、お前ほとんど虐められてただろ?」

「そんなんじゃないよ」

母は聞き流していた。

雄一もこれ以上母に心労を与えてはいけないと思いそれ以上は何も口にしない。

ただせっかく助けてやったのに何故こいつは気を悪くしているんだと不思議で仕方がなかった。

確かに俺は喧嘩早くて短気で不器用な性格だけど人の気持ちが分からない訳でもない。

 

雄一は一人で海へ行き、葛藤しながらも黄昏れていた。

 

 

 

 

  

 

 


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