人生は花鳥風月

森羅万象様々なジャンルを名もなき男が日々の心の軌跡として綴る

早熟の翳  二十二話

「あ~ら久しぶり、御機嫌よう」

 まり子は相変わらずの陽気な面持ちで貴族みたいな口調で語り掛けて来た。

「何だよお前、何かいい事でもあったのか? えらく陽気そうだな」

「今貴方と会ってる事が一番嬉しいのよ、一々言わせないでよ」

「ありがとう」

「貴方もちょっとは嬉しそうな顔しなさいよ、いくら弁護士になったからってそんな陰気な顔は貴方には似合わないわよ」

「そうだな・・・・・・。」

 ヤンキーの王道を歩んで来れたのが誠也の天性であるとすれば、まり子の天真爛漫さも天賦の才のような気もする。だがこれまで誠也がまり子の落ち込んでいる所を見た事がない点を踏まえればその才能はまり子の方が1枚上なのかもしれない。

 誠也は取り合えずまり子の近況を訊く。

「ところで看護師の仕事は順調なのか?」

「そうね、今の所は」

「ま、お前の事だから何の心配もいらないだろうけどさ、そういえば誰かも看護学部だったな」

「聖子の事?」

「そうだ、お前の幼馴染のあの子だよ、あれからは大学でも殆ど会う事がなかったけど、あの子元気してんの?」

「知らないけど、あの子とは幼馴染とはいえそこまで仲が良かった訳でもないしね」

「そうだったな、でも淋しい話だな・・・・・・。」

 まり子は何かを閃いたような顔つきになった。

「なるほど、貴方の馬鹿正直さも相変わらずね」

「何がだよ?」

「貴方今修二君や清政君の事で悩んでるんでしょ、バレバレよ」

「お前の勘も相変わらず正確か」

 誠也は微笑しながら言った。

「でもその悩み事は取り越し苦労ね、向こうは全然悩んでなんかないわよ」

「何でそんな事まで分かるんだよ?」

「簡単な話よ、あの人達は貴方と比べると余りにもバカだもん、そこまで物事を掘り下げて考える知能を持ち合わせてないでしょ、別に蔑む訳でもないけど」

 確かにまり子の言う事にも一理はあった。実際これまでの彼等からいらぬ進言を受けた事はあっても全て水泡に帰していたし、誠也に対し何か苦言を言うような事は全く無かった。しかしそれが却って徒になる可能性も否定は出来ない。

 まり子に言わせるとこれ自体が取り越し苦労になるのだろうが、誠也はその不安だけは払拭出来なかった。

 

 月満ちればやがては欠ける。あれだけ見事に咲き誇っていた桜も今では葉桜となり、枯れ行く様には憂愁ささえ感じる。しかし人々は来たるべく夏を想い快活に振る舞う。それは気候は言うに及ばず草花や虫、小鳥に魚、森羅万象全てが勇ましく舞い踊る美しさを漂わす。

 しかし誠也の下には看過出来ない凶報が齎された。

 久さんが言うには清政の仁竜会は解散したとの事で、親分は無論若い衆達その悉くが路頭に迷い何処かの組に身の置き場を頼んでいるらしい。その依頼は案の定安藤組にも寄せられる。誠也はらしくもなく立場を弁えずに久さんに願い出た。

「出しゃばった事は十分承知しておりますが、清政と健太の二人だけでもうちの組で預かる事は出来ないでしょうか?」

 久さんは全く動じる様子もなく整然として面持ちで答えた。

「どうせそう言うと思ったぜ、だがそれは無理な話だな、だいたいあの組はうちとは敵対していた組織だ、そんな奴等を受け入れるほど俺もお人好しじゃねーし、あいつらだってそれではカッコつかないだろ、ヤクザの筋はそんな軽いもんじゃねえ」

「すいませんでした」

「それともう一つ、あの組には貸もあるんだ」

「本当ですか!?」

「あぁ、敵対してるとはいえうちの先代が情けを掛けて敵に塩を送ってたんだ、それも結構な額でな、まだ一文も返して貰ってねしな」

 誠也は慌てふためき帳簿を手にする。その刹那久さんは別の帳簿と借用書をテーブルの上に叩きつけて来た。

「そこには載ってねえ」

 そう言って出された書類には確かにその証拠が捺印までされて示されてある。日付は20年も前で額面は5000万円。もはや解散した組にそんな大金が残っている筈はない。誠也はその事実にただただ愕いていたが、久さんが次に口にする事を察すると腹を決めるのであった。

「誠也よ、分かってるな、俺達も随分キリトリ(取り立て)はして来たんだが返済した貰ったのは僅か数百万ぽっちだ、だがこの時世極端な追い込みも掛けれねーし、後はお前に任せるしかねーんだよ」

「分かりました、取り合えず手続きを始めます」

 その言葉とは裏腹に誠也の気持ちが揺れ動いていた事は言うまでもない。だが彼はそんな葛藤する気持ちを押し殺し、今こそまり子のような信条が必要だと思い無理矢理にも不動の精神を装う。目敏い久さんは彼の心境まで見透かしていたに違いない。

 

 梅雨入りした街は実に鬱陶しい雨が降っては止んで、止んでは降る。本来であればその雨に依って己が暗鬱な心持を洗い流したい誠也ではあったが、時間がそれを許してはくれない。誠也は訴訟を起こす前に清政に会いに行く。

 この時の彼の心情はただ義兄弟の身を案ずるだけでもなく、清政にこの際足を洗う決心を促す為でもあった。それはとりもなおさず健太が堅気になる事を切実に願う彼の親心的なものでもあった。

 例の店で待っていた誠也の下には清政に健太、そして声を掛けていなかった修二までもが姿を現す。意図せずに醸し出す四人の風采を慮った親っさんは彼等をまた奥の座敷へと促す。取り合えず一献飲み干した四人はただ黙って坐っていた。そこで満を持して誠也が口を切る。

「本題に入る前に訊いておきたいのだが、健太、お前何でヤクザになんか成ったんだ?」

 健太はまともに誠也の顔を見る事が出来ない。しかしこのまま黙っているのもおかしいと感じた健太はなけなしの根性示すべく誠也に答え出す。

「誠也君、俺はもう昔のヘタレ丸出しだった頃の俺じゃないんだ、ヤクザになってこの数年、部屋住みから始めて極道の礼儀作法や筋は十分に培われたんだ、今ではシノギもしている、俺は何一つ後ろ指を指されるような事はしてないつもりだよ」

 黙って聴いていた清政は健太の肩に手をやりながら恰も良く言ったと言わんばかりの表情を泛べる。そんな雰囲気にも構わず誠也は健太を殴り飛ばした。壁に飛ばされた健太は反抗する様子も見せずただ俯いていた。

「だから言ったんだよ、お前何でやり返して来ねーんだ? ヤクザえ培われた根性はどうしたんだよ? おー!」

 制止しようとした修二も振り解き尚も誠也はカマシ上げる。

「何時か言ったよな、18を超えたら族は引退するのが俺達の世界では常識なんだ、お前はまずヤンキーの柄でもねーしヤクザでもねえ、だから俺はお前が更正して真っ当な道を歩む事に期待してあの時は許したんだよ、それを今度は自分の組が潰れたから久さんを頼りたいだと! お前極道の筋なんか全然弁えてねーじゃねーか!」

 一旦火が着いてしまった誠也を止められる者は誰もいない。彼の言い分は言うに及ばずその迫力は以前の誠也のままで三人は何も言い返す事が出来ないばかりか酒にも全く手が伸びない。そんな中親っさんがまた頼んでもいない料理を少し神妙な面持ちで運んで来た。

「誠也、これ以上は何も言うな、その健太とやらはうちで預かる、それでいいな」

「有り難う御座います」

 誠也は二つ返事でそう答えた。当の健太はまだ項垂れたままだったが、誠也は強引にでも健太を堅気にする決心でいたのだった。

 このやり取り自体が本題であったようにも思える。四人は取り合えず親っさんの気遣いを受け止めるべく、その手の凝った料理に手を着け始める。

 梅雨の鬱陶しい雨は尚もこの四人の心を憂い続けるのであった。

 

 

 

 

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5月の始まり 語彙の日 ~釜めしの日

 

          皐月空  優雅に泳ぐ  鯉のぼり(笑)

 

 いよいよ5月ですか。正月が過ぎ、寒い冬が過ぎ、この前3月桃節句と思っていたら既に桜も散り4月も終わって早や5月と。本当に月日の経つ早さは怖いぐらいですが。

 毎日何かの記念が関連付けられていますが、今日5月1日は調べた所でも

八十八夜

「令和」改元の日

メーデー

日本赤十字社創立記念日

扇の日

スズランの日

水俣病啓発の日

語彙の日

カリフォルニア・レーズンデー

宅配ボックスの日

恋がはじまる日

鯉の日

コインの日

自転車ヘルメットの日

恋の予感の日

本仕込の日

緑茶の日

新茶の日

資格チャレンジの日

釜飯の日

あずきの日

省エネルギーの日

 と実に多種多彩で、1年を通してもかなり多い方ではないでしょうか。その中でも自分が気になったのを掻い摘んでレビューして行きたいと思います。

 

語彙の日

 まずはこれですね。語彙力は大切ですよね。特にブログを作成する上では欠かせない事柄だと思います。これが無ければ自分の想いも伝わらないし、読む事すら難しくなって来ます。自分が毎日綴っているトーシロー丸出しの拙い小説もいまいちウケが悪いのはストーリーも然る事ながら、この語彙の無さに起因していると反省しています。

 語彙力や文才のある人は凄いです、憧れます。これからも精進して行きたいと思う次第ですね^^

 

 コインの日

  自分も昔は結構記念硬貨を持っていたのですが、如何せんギャンブル好きな性質なもので貴金属と併せて殆ど売ってしまいましたね。本当に情けない話です 😢 

 でもこれからはそんな馬鹿な事はしません。ここに固く誓います! ま~勝手にしろって話なんですが(笑)

 でも記念コインはアクセサリーとしてもカッコいいですよね。自分が気に入ったものを幾つか紹介してみたいと思います。

 

 

 

  

 

 

 

 

釜めしの日 

  釜めしは美味しいですよね、食欲をそそられますし大好きです。その起源は大正12年(1923年)、関東大震災あとの東京上野で行なわれた炊き出しをヒントに、のちの浅草の『釜めし 春』の女将が開発させた一人用の釜で、客に供した料理がはじまり。とされているそうです。

  レシピは 

1ー研いだ米を用意し、具と共に器に盛る

2ー水に醤油、料理酒、みりん、昆布などを加え、味を調える

3ー強火で出汁が吹きこぼれるまで(5分程度)炊く

4ー弱火にする

5ー水気が無くなってきたらふたを完全に閉め10分から15分ほど蒸らす

6ーできあがり

  とありますが、結構簡単なんですよね。自分もチャレンジしてみたいと思います^^

  

 

 

 

 という事で5月も始まりGW真っ只中。コロナの影響で大した事は出来ないかもしれませんが、自分は取り合えず土曜日恒例の銭湯に行って来ようと思います  😉  

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早熟の翳  二十一話

 辞意を伝えた誠也を林田先生は大して引き留めるような事もせずただ一言

「何時でも戻って来てくれても結構だから」

 と優しい声を掛けてくれた。奥方まで笑って見送ってくれる。その光景はまるで親が我が子の自立する姿を見ているような誇らしげな感じさえ漂わす。

 そんな様子に感涙する誠也ではあったが、立つ鳥跡を濁さず、自分のデスクや身辺のものは何一つ残さず綺麗に掃除をし片付ける。僅か10ヶ月足らずで事務所を辞める事になった自分の勝手な振る舞いを大いに恥じ、世話になった二人には深々と礼をして立ち去る。しかし誠也にはまだ一抹の不安が残っていたのも事実であった。

 事後報告を訊いた母は狂ったように悲しみの声を上げ、姉と一緒になって誠也を叱る。誠也も何度も母に頭を下げ詫びを入れる。

「母さん、ほんとにすまない、でも俺は自分の事は自分で決めたいんだ、これからも親不孝は絶体にしない、取り合えずここを出て行くよ」

 と言って母の制止も訊かずに家を出てアパートで独り暮らしを始める。この時点で親不孝であった事には許しを請う想いで、敢えて母の顔を見ずに出て行く誠也の心境は複雑なものであった。

 誠也の荷物といえば鞄一つで実にシンプル極まりない。後のものは追々揃えれば良いという彼らしい発想には無頼ささえ感じる。しかし誠也の人生とは元々そうしたもので、今回の久さんに頼った件を除けばその悉くは彼自身の強靭な精神が成せる業でもあったのだ。

 だが夜8時頃にアパートの部屋に入った誠也には空虚な心持が込み上げて来る。周りには誰もいないその狭い部屋で聞こえる音といえば住民が立てる生活音だけであった。

 

 1年で一番寒さが厳しい2月は正月以外には余り関心がない誠也にとっては実に退屈な時期で、厚着で家路を急ぐ人々の姿には何の風情も感じない。ただ快活に啼く鳥の声だけが誠也の心を充たしてくれる。そんな中誠也は満を持して久さんの組事務所に向かうのであった。

 少し街はずれにあるその事務所は小さいながらも一軒家で、表には安藤組と書かれた黒額に白字の表札が掲げられている。玄関の外でシケ張りをしていた男は前に見た運転手で、互いに一礼した後彼は誠也を中へ案内してくれる。通された部屋には久さんが厳然とした態度で誠也の訪問を待ち構えていた。

「おはよう御座います、この度の久さんのお心遣いには本当に感謝しています、まだまだ未熟で駆け出しの青二才ではありますがどうぞ宜しくお願い致します」

 そんな誠也の姿をじっと見ていた久さんは固くなるなと言わんばかりに腰掛けるよう促してくれる。そして早速二人はその場にて四分六の兄弟盃を交わしたのである。

 誠也は言う。

「久さん、今の自分にその盃は大き過ぎます、自分は子分の立場で十分です」

「何言ってんだお前、この前弟分でいいかって話をしたばかりじゃねーか、それにこの盃はあくまでも俺とお前の心の盃だ、だからお前は正式なヤクザの構成員では無いんだよ、それだけは分かってくれ」

 久さんのこの言葉は誠也には嬉しい限りであった。だが一旦極道の道に足を踏み入れた以上、下手な事は出来ない、誠也は久さんに一生付いて行く腹を括ったのだった。

 改めて自己紹介をした誠也に組員達は揃って

「先生」

 という呼称で接して来る。誠也はこの呼ばれ方にいまいち気が乗らずに

「誠也でいいです」

 と言うのだが久さんの命令には誰も逆らう事が出来ず、結局はその呼び方を強いられる事になる。組員の年齢は誠也から少し上か、彼等は誠也に対しあくまでも敬語で接するのであった。

 当面の間訴訟などは一切なく、誠也は組のシノギや生活ぶりを観察しながら経理の事務を遂行しつつも、久さんからは専ら自由に行動する事を許されていた。安藤組のシノギは昔ながらの博打と金貸しが主であったが、誠也はその一部始終を見た上で久さんに提言する。

 それは金利が少し高いというものであった。久さんは眉を顰めながら誠也の提言を訊いていたのだが、今の時世確かに高い金利を取っていたのも確かな話で何時摘発されてもおかしくはないという考え方から久さんは已む無く金利を引き下げる事に同意する。それでもまだ年利8割という利率はヤクザにしては安いかもしれないが一般社会からは高い事は言うまでもない。誠也の思惑は摘発を怖れるものでは無く、そのお人好しな性格がさせた事は久さんにも感じられたのかもしれない。だがそうと知っておきながらその提案を受け入れた久さんの度量の深さにも感銘を受ける誠也であった。

 ヤクザとしては余りに静かな日常が続く。このまま何も起きずに職務に専念するだけでも誠也は十分稼げる。だが修羅の人生を送って来た彼の血は嵐の前の静けさを感じずにはいられない。その未知数である先々の事を警戒しながら時は過ぎて行った。

 或る日みんなで飲みに行った席で一人の若い衆が酔いが回った所為かこんな事を口走った。

「親分、もうそろそろ仁竜会を潰しませんか? あの組はもう風前の灯ですしボンクラ息子も未だに部屋住みで跡目が定まってないらしいじゃないですか、他に持っていかれる前に動いてはどうですか?」

 久さんは黙ったまま酒を飲み続け一切返事をしないままにその組員を軽く殴った。すると今まで何も言わなかった誠也が口を開く。

「久さん、自分の事ならお構いなく、あいつがどうなろとも自分は干渉するものではありません」

「お前も黙ってろ」

 久さんの心境は明らかに揺れていた。仁竜会というその組織は誠也の義兄弟である清政の親っさんの組なのだが、この時の誠也の気持ちは決して兄弟分を貶めるような浅はかなものではなく、亦以前の件に依る感情的なものでも無かった。

 あくまでも久さんに対する儀礼から発したその心情は汚れた思惑でもなく、出しゃばった物言いとはいえその様子には何か威厳を感じない事もない。

 この誠也の意図するものとは一体何なのだろうか、軽率でないとすれば清政に対する優しさの裏返しでもあるのか、それともその後ろに控える健太への気遣いなのか。そう言えば確かに健太の事も気にかかる。

 言い出しっぺの組員はその後一切声を出す事もなかったが、彼などにこの二人の心境が図れる訳もない。他の組員とて同じ事で彼等はただ大人しく、行儀良く酒をちびちび飲んでいるだけであった。

 

 それからも大した事件は起きずに誠也は単調な仕事を熟して行く日々が続く。ヤクザの構成員でもない誠也であったが、どうしても清政、健太の事は気に成って仕方がない。その衝動は誠也の気持ちとは裏腹に勝手に動き出す。だが彼の烈しい感情を止めたのは久しぶりに会ったまり子であった。

 春の陽射しが燦然と照る中、彼女は柔らかい風と共に姿を現した。その佇まいは久しく会っていなかった誠也の目にはまるで妖精のように漂う。何故彼女はこんな時に限って現れたのか、今までも同じだった。彼女は常に誠也が少しでも落ち込んだ時に必ず姿を見せてくれる。

 まるで母親のようなその包容力は誠也の鬱蒼とした心情までをも包み込み快楽の境地へと誘(いざな)う。彼女は天女なのか女神なのか、まり子の前では何事も包み隠さず白状したしまう誠也も所詮は一人の男であったに相違ない。

 だがこの時の誠也は決して己が悩みなどは謳わず、凛とした面持ちでまり子に対峙するのであった。

 春の柔らかい風は相変わらず二人を優しく包んでくれる。二人はこの風に報いる事が出来るのだろうか。桜の葉音に小鳥や虫の鳴き声は笑っているようにも思える。

 

 

 

 

 

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三島由紀夫『鹿鳴館』を読み終えて

 

  

  清原久雄も柏木和男も死なせずに済んだ筈、生きていて欲しかった。と一々ツッコミを入れてしまう癖がある自分は所詮、狭量で天邪鬼で物語を読む資格など無いのでしょうか。或いは自分で言うのも烏滸がましいですが感情移入し過ぎなのか・・・・・・。

 三島由紀夫鹿鳴館』のレビューです。

 

鹿鳴館とは 

 明治19年1886年)の天長節鹿鳴館で催された大夜会を舞台として、恋と政治の渦の中に乱舞する四人の男女の悲劇の運命を描き、著者自ら〈私がはじめて書いた俳優芸術のための作品〉と呼んだ表題作。他に、人間の情念と意志のギャップを描く嫉妬劇「只ほど高いものはない」、現代における幸福の不毛性への痛烈な挑戦「夜の向日葵」、六世中村歌右衛門のために書かれた「朝の躑躅」の4作から成る戯曲集。

 

それぞれのあらすじと感想 ~鹿鳴館  

 明治19年天長節鹿鳴館で催された大夜会を舞台に、政治と恋、陰謀と愛憎の渦の中で翻弄される男女・親子の悲劇をドラマチックに描いた物語。 修辞に富んだ詩的で高揚感のある台詞まわしと緻密な構成で、華やかな様式美の大芝居。

 

<感想> 


 影山伯爵夫人朝子と清原久雄が不憫で仕方ないというのが率直な感想ですね。娘顕子とその恋人久雄を救いたいという大徳寺侯爵夫人季子の切実な願いを引き受けた朝子の覚悟には凄まじい気迫が感じられます。

 ですがその覚悟も空しく計画は蹉跌してしまいます。その策を見事に看破した夫の影山伯爵も朝子に対し色々と自分の想いを訴えていますが、何度読み返してもそれは見苦しい弁解にしか見えないんですよね。

 影山はしきりに「政治には真理というものはない」と謳っていますが彼自身に真理がにように見えて仕方ないですね。いくら朝子に対して熱弁しても彼の純粋な心は窺えません。影山こそが真の黒幕で自分はこういうタイプの人間は大嫌いですね。いくら政治家であっても共感する所が全くありません。三島さんはこの影山という人間をどう思っていたのでしょうか。

 そして本の裏表紙にある『僕が今夜暗殺しようとしているのは、僕の父なんです』という過激な文言には愕かされますが、それは言うまでもなく現代社会で在りがちな単なる親不孝や思春期の子供の親に対する反抗などといった底の浅い感情から来るものでは無いんですよね。

 あくまでも己が志を全うする上でどうしても避けては通れない道。止むを得ず犯行に及ぼうとした彼の覚悟には凛とした魂を感じます。

 今とは時代背景も全然違いますがこういう硬派で頑なな心情は本当に好きです。

 

~只ほど高いものはない 

 無給で我が家の女中にした女が夫の過去の浮気相手で、妻は嫉妬心から復讐の為に色々と画策するのだが如何せん浮気相手の方が1枚上手。下手に出るように見せかけながらも実は何もかも見透かしていたこの女中の真意は何処に・・・・・・。

 

<感想> 


  はっきり言ってこの物語には余り思い入れはないのですが、この妻といい娘といい何か浅はかな思慮を感じますね。妻の露骨な嫉妬心の強さに対し、娘は親に抗うように常に上から目線的な物言いで自分の素直な気持ちを隠そうとしているのが見え見えで無理を感じます。

 それに対し良人(おっと)の冷静さや女中ひでの周到さは見事に見えます。ですがそれは意図したものではなくその豊かな人生経験の成せる業で狡猾さを感じません。この女中ひでは或る意味才女と呼べると思います。

  はっきり言って自分はこの妻と娘のような女は嫌いですが、その嫉妬心が純粋な気持ちの表れだとすると、多少なりとも策を弄した女中に同調してしまう自分の心にも矛盾が生じてしまうんですよね。

 改めて三島由紀夫の人間の心理描写の巧みさ、奥深さを痛感する所です。

 

~夜の向日葵 

 鷹揚で無邪気で華やかな、実に明るい性格の柏木君子は幼い頃から人並みの気苦労を感じた事が無いに等しい。そんな君子を取り巻く者達は何時も君子に憧れを抱き、時としてそれが嫉妬に変わる事もある。

 最愛の夫と息子まで喪ってしまった君子の心境は如何に・・・・・・。

 

<感想> 


  この物語は鹿鳴館の次に、いや同等に面白かったです。天真爛漫、天衣無縫とは正に君子さんみたいな人の事を言うのでしょう。幼少の頃から何不自由なく生きて来たボン(神戸弁でボンボンの意味)育ちな君子には自分も憧れますし羨ましい限りです。ですがその理由はあくまでも精神的な事で裕福な家庭環境などには余り関心はありません。

 そんな君子も流石に我が息子の死には悲しみのどん底に堕とされてしまいます。それでも彼女はあくまでも前向きに立ち回り悪評高い男と一緒に成ろうとさえします。

 親友の花子との訣別は花子の君子に対する嫉妬から来るものだと思いますが、その気持ちも十分分かります。でもやはり君子の生き方は好きですね。

 この花子とて裕福な育ちな訳ですが心の民度とでも言いますか、そのモラルや精神は明らかに、遙かに君子の方が素晴らしいと思いますし魅力を感じます。

 勿論花子も君子の事が好きだったればこその所業であったとも思いますが、花子から散々悪評を訊かされながらも園井院長と夫婦に成ろうとした君子の真意は計りかねますが、それでも尚人の悪口はなるべく言わない君子の性格には感服します。

 根拠もなく「何事も思うようになる」と言った彼女の言い振りには信憑性まで感じますね。こんな人が存在するのでしょうか。

 

 ~朝の躑躅(つつじ)

  銀行が倒産した事に依って財産を失う危機に瀕しながらも最後まで女の操を守り抜こうとした高貴な女性、草門子爵夫人綾子の矜持とは。

 

<感想>


 三島作品に度々出て来る華族。「およしなさい」とか「汚らわしい」とか「あそばせ」などと言った高貴な物言いは時代を超えて美しいと思いますね。それこそ自分のような底辺民が言うのもおかしいですけど、日本の古き良き時代を彷彿させてくれます。

そんな中でいくら人生が破綻してしまうような情景になってもその気高い気品を失う事を怖れた、というよりは己が意志を貫こうとした綾子の心情はただ華族という身分だけから発するものではなく、人としての矜持から来るものだと思います。

 結局はその操を守り切れなかった訳ですが、決して小寺のような男に屈した訳でもなただお家の為、夫の為にした行為。そんな綾子の想いを裏切るかのように悲しい遺言まで残して自害してしまった夫ですが、彼女は夫を憎む事なく己が信条を貫きました。

 約束に反し金を貰う事を放棄した時点で操を手放した事にはならないし、彼女は最後まで自分には負けていないと思います。この綾子も朝子、君子と同じく不変の精神を持っていたように思われますね。

 

 

 以上それぞれの感想を綴って来ましたが、三島作品に共通するものはやはり人の信念、信条、矜持と自分には思えます。言うまでもない事ですがその心理描写が本当に精巧で尊敬しますが、作家に憧れる自分としては嫉妬する面もあります(笑)

 決して己惚れる訳ではありませんが三島以外の作家にそこまでの想いを寄せた事はありません。とはいえ三島の作品にそこまでの烈しい抑揚も感じないのは自分だけでしょうか。でもそれをカバー出来る技術が十二分にあるからこそ無し得る彼の非凡な才能には本を読む度に惹かれます。

 純文学の素晴らしさ、奥深さ、難しさを痛感する所です。

 

 という事でまたまた凡人の浅はかなレビューでしたが、三島文学を読破するまでにはまだまだ時間が掛かりますね。

 これからもめげずに読書に勤しもうと思います 😉

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早熟の翳  二十話

 被告人の男は伸ばし放題の汚い髭に虚ろな目付き、ヘラヘラと薄笑いをしながら先生にも一礼もせずに終始不遜な態度で椅子に掛けていた。

 先生が話をし出すと一切訊く耳は持たない様子で貧乏ゆすりをしながら言いたい事だけを口にする。

「だから、俺は正当防衛なんだよ! 先に手を出して来たのは向こうだから」

「それは通らないんだよ、全くの無傷の貴方に対して相手方には刺し傷以外にも刀痕や無数の打撲痕があるんだよ、とてもじゃないが正当防衛で通すのには無理がある、貴方が素直に認めれば罪を軽くする事は出来るかもしれないがね」

「頼りない先生だなー、俺は無罪なんだよ、警察も弁護士も無能な奴しかいねーのかよ、もっとマシな弁護士呼んで来いよ!」

「とにかく冷静になってくれないと話にもならない、また来るから」 

 面会は僅か数分で終わった。この間誠也は黙っていたが、男に対して憤っていた事は言うまでもない、そして先生のあくまでも優しい接し方にもやり切れない思いを抱いていた。

 弁護士が相手にするのは被疑者、被告人が殆どであるとはいえ誠也は改めて荒んだ世の中の現状をまざまざと見た気がして幻滅していた。どこから見ても悪人のような奴を弁護をして一体どんな利益があるというのか、全く生産性のないあんな男など寧ろ死刑にするべきではないのか。

 帰りの車の中で誠也の心境を察した先生は信号待ちしている時に軽くボヤく。

「ほんとは俺だってあんな奴の弁護などしたくないんだがね、これが仕事なのさ」

 誠也は返事をせず少し暗鬱な表情のままアクセルを踏み出した。

 事務所に帰ると先生の奥方がお茶を用意してくれた。

「誠也君、どうだった? 酷いもんでしょ? でもこれが現実なのよ」

「はい、でもあんな男にも人権があるんですよね、稚拙な事を言うようですが、国選であんな奴の弁護を引き受けるメリットなんてあるんですかね? 自分ならたとえ私撰であっても絶対に引き受けませんけどね」

「そう言うと思ったわ、でもね先生はもっと酷い依頼人をいくらでも相手して来たのよ、勿論更正する可能性がある人限定だけどね」

「あの男に更正の予知があるとは思えませんけどね」

「その内分かるわよ」

 誠也は全く同調出来ない心持のまま話を訊き、自分の仕事に移る。自分もこれまで色んなヤンキー達を見て来たがあんな性根の腐った奴は初めてだ。昔の自分ならその場で叩きのめしていただろう。自分は何故弁護士になったのか、これなら検事になった方が良かったのではと悔恨の念に襲われる。こうした考え方は彼の若さに起因するものなのか、亦その実直で真っすぐ過ぎる性格の成せる業なのか、でも誠也はいくら年齢を重ねてもこの鬱蒼とした気分から解き放たれる気はしなかった。

 そんな誠也を他所に先生は黙々と資料に目を通していた。

 

 

 巡り行く気節の中で色んな木や花が街を彩るが、誠也はこの数ヶ月で大して成長した感じがしなかった。先生も相変わらずのお人好しな様子であの男をギリギリまで説得するつもりのようだ。気晴らしに飲みに行ってもつまらない、まして清政達とはこの前の一件以来空気が入ったままだから気が進まない、こんな地に足が着かない状態でまり子に会う訳にも行かない。誠也は錯綜する想いの中でまたまたあの御方を頼る事にした。

 安藤久。陸奥守の初代総長にしてヤクザの大幹部。彼が本家の直参になる日も遠くはないだろう。今までも何度か世話になった事があるものの彼は決して誠也の事を忘れてはいまい、彼に会った後は必ず良い結果が齎された。誠也は余り余計な事を考えずにまた久さんに会う腹を固めた。

 久さんと会う場所は決まっていた。例のバーに赴いた誠也の前には既に黒塗りのベンツが停まっていた。誠也が近づくと車から出て来た運転手は軽く一礼し

「ご苦労さんです、兄貴は既に入って待っています」

 と丁寧な声を掛けてくれる。店のドアを開け中に入ると久さんは相変わらずの静かな佇まいでマスターと少し話をしながら渋い表情で煙草を吸っていた。

「すいません、遅れました!」

 縦割り社会丸出しのその言い方は店内に響き渡りマスターを少し怯えさせる。煙草の火を揉み消した久さんは徐に誠也の顔に目を移し口を切り出す。

「おう久しぶりだったな、今日は俺が早く来過ぎたんだ」

「ご苦労さんです」

「ま、一杯飲めよ」

「有り難う御座います」

 始めの一口を飲んだ後、誠也はどう切り出すべきか迷っていた。いきなり本題に移るのに抵抗を覚えた誠也は世間話をし始めた。

「最近の日本は暑いのか寒いのかよく分かりませんね、自分なんかは季節の変化にも無頓着になってしまいましたよ、困ったもんです」

 そんな誠也の取ってつけたようなその場凌ぎの話にも久さんは一向に動じる事なく、あくまでも表情を崩さないまま答える。

「そうだな~、俺にも真の春はなかなか回って来ないな~」

 さり気なく言った言葉にも何か重みを感じる。そんな感じで誠也はその後も取るに足りない話を続け自分自身の酒を進ませた。

 少し酔いが回って来た頃合いを見て久さんが切り出す。

「ところでお前、弁護士になってらしいじゃねーか、流石だな」

「有り難う御座います、何とか法曹の道へ入る事が出来ました、これも偏に久さんのお陰です」

「そんなベンチャラはいいんだよ、実際俺は何もしてねーしな」

「そんな事はありません」

「で、本題はヤクザの顧問弁護士に成りたいという訳か」

 久さんは微笑を浮かべながら言っていたが目は決して笑っていない。

「いや、そういう訳じゃないんですけど」

「だったら何だ?」

「実は自分弁護士になって事を少し後悔してるんです、結構色んな事がありまして」

「なるほど、で、お前の腹はどうなんだ?」

「この前清政にもその事を訊かれたんです、勿論断りましたが」

「おうあいつか、あれの組はもう大した事ねーだろ」

「それよりも、また俺をアウトローの道に引きずり込むのかという気持ちで」

「そいつは正しい、だが自分を追い込むのはいけねーな、それがお前の唯一の欠点かもな」

「そう言って頂けるのは有難いのですが、言い方を変えるお人好しなだけかもしれません、そう思うと情けない気もして来るんです」

 久さんは少し何も言わないまま酒を飲み自分で煙草に火を着ける。この僅か2、3分の間にも誠也は気を遣って仕方がない。久さんは誠也のその心境を見透かしたような表情を浮かべ喋り出す。

「分かった、お前、俺んとこに来い、俺らは所詮ヤクザだ、そんなに難しい訴訟もないし、居てくれるだけでも金にはなるだろう、お前のやりたいようにしたらいい、そっちの方はお前に任せる、その代わり肩書は俺の弟分だ、それでいいか?」

 誠也は大いに悩んだが酔いが回った所為か取り合えず

「はい」

 という返事をしてしまった。久さんは念を押すまでもなくマイペースで酒を飲み続けている。その姿を見た誠也はやはりこの人は全ての面に於いて自分上を行っている。到底自分などが突破出来る筈もない大きな壁を認識するのであった。

 

 まり子言うが如く誠也は確か唯我独尊で生きて来た、しかし時として道に迷った事も多々ある。方や誠也が見る限りでも全く道に迷った形跡を表さない久さんの生き様とは一体何なのか。それは単に彼の持ち合わせた天賦の才が成せる業なのか、それとも彼にも一応は人並みの悩みがあるのであろうか。亦そんな事を一々気にする誠也の度量も所詮は大したものでも無いのか。

 思春期を颯爽と走り抜けて来た誠也は今更ながら、十代の若者が迷い込むであろう己が道に彷徨い始めるのであった。だが芯の強い誠也の気持ちは決して短慮ではなく自分の正直な心が赴く純粋な心意気を示しただけの話でもあった。

 店を出た二人は少し強い冷たい風を感じる。その風は何の愛想もないまま二人の心を吹き抜け天に還る。そしてまた違う風が吹きかけて来る。

 人の気持ちは読めても風の向かう先までは読めない二人であった。

 

 

 

 

 

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フェニックスの日 ~鳳凰の羽搏き

 

 今日4月29日は昭和の日でありますが、4(フェ)月29(ニックス)日でフェニックスの日でもあるんですよね。1年を通して毎日幾つのも物事が関連付けられている、一日一日に何か意味がある。そう思うとたとえ一日でも無駄に生きる事は出来ないと改めて痛感する所でありますが。

 そこでこのフェニックス(鳥の方)に関連する事でも綴ってみたいと思います。

 

フェニックスと鳳凰の関係性 

 フェニックスとはエジプト神話の霊鳥。五百年ごとに神壇の上でみずから焼け死に、その灰の中からまた幼鳥となってよみがえるという。不死永生の象徴。不死鳥。

 鳳凰は欧米では東洋のフェニックスともみなされ、英語では Chinese Phoenix 〔中国のフェニックス〕とも呼ばれている。

 過去の歴史においても現在のフィクションにおいても、フェニックスと鳳凰はしばしば相互に関連付けられたり、混同される。中国の鳳凰は西洋のフェニックスとは本来別系統のものであり、特徴も異なる。

 ただし、ペルシア神話の「フマ」はフェニックスと鳳凰の中間的な性質をもち、ベンヌ〜フマ〜鳳凰は死と再生の象徴(政治的には新王朝の到来の象徴)として日の出を告げる鳥の神格化で、神話学的に同一起源である可能性が指摘されている。

 とありますが、ま~ここはフェニックス≒鳳凰というアバウトな感覚で語って行きたいと思います^^

 

フェニックス一輝 

  まずはこれですね。聖闘士星矢に登場する青銅聖闘士で、アンドロメダ瞬の兄にして他の青銅聖闘士達の兄貴分的な人物です。

 彼は一匹狼で群れを成す事を嫌いますが、改心してからは常に星矢達の危機に駆け付け縁の下の力持ちになってくれます。

 一応青銅聖闘士という設定になっていますが、彼が使う鳳凰幻魔拳(ほうおうげんまけん)は黄金聖闘士サガの幻朧魔皇拳(げんろうまおうけん)にも匹敵する強烈な技ですかし、サガの双子の弟カノンとも互角の闘いを繰り広げた所を見ても一輝の強さは黄金聖闘士にも引けを取らないと思いますね。

 そして孤高の戦士一輝は星矢達のように馴れ合う事を嫌い、それを似非ヒューマニズムフェミニズムと蔑んでいます。でも一輝のこうした独自の美学は好きですね。それは言わばキン肉マンとキン肉アタル(ソルジャー)との関係にも似ていると思いますね。一輝の孤高の美学=アタルの真・友情パワーと言っても過言ではないでしょう。

 あとハーデス編ではガルーダのアイアコスと闘っていますが、その時は序盤劣勢だった一輝がアイアコスの技を喰らいながらも立ち上がって

「アイアコス、お前のスピードはさっきたっぷり見せて貰った、お前を倒すにはその上を行けばいい訳だ」

 と白々しい事を口にしています。これもおかしいですね。ならば何故始めからそのスピードを持って対峙していなかったのだ? という話なんです。

 聖闘士星矢北斗の拳同様ツッコミ所は満載です(笑) 

 

 

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 FFシリーズの幻獣フェニックス

 これもカッコいいですよね。自分はFF6のロックが喪った彼女レイチェル復活の為に追いかけていた魔石というストーリーが好きでしたね。 

 フェニックスの魔石は洞窟最深部にてロックによって発見されるが、ヒビが入っており、 コーリンゲンにてレイチェル復活を試みたが、その力を発揮できず、魔石は砕け散ってしまう。効果がなかったと思われたとき、レイチェルが僅かな時間だけ蘇生。 フェニックスの力で少しだけ時間を貰ったという彼女はロックに感謝の言葉を伝え、 心の中の人を愛するよう告げる。

 そして天に召される彼女の最期の祈りの力により、フェニックスの魔石はロックの手の中に復活する......。本当に泣けます 😢 

 戦闘中に召喚することで、燃え盛る翼から「転生の炎」を放ち、倒れたPTの味方全員を蘇生させる。言わば最強の回復、復活技ですよね。

 FFシリーズはこの6と3が好きでしたけど。最近のは全くやっていません(笑)

 

 

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 龐統士元

 諸葛亮孔明と共に伏流鳳雛と並び称される三国志の大軍師龐統。彼は亡くなる寸前、主君の劉備に対して

「自分は所詮飛び立つ前の雛、真の鳳凰は殿です」

 と言って人生に幕を下ろしましたが、これだけの賢人が玄徳に対しそこまで心血を注いで仕えていた 。正に至誠一貫。劉備の並外れた人徳も凄いですがこの龐統の心意気にも泣かされます。いくら時代が違うとはいえ美しい主従関係だと思いますね。

 持論としては劉備関羽張飛、超雲、そして孔明龐統、何れも健在なままで天下統一は果たして欲しかったですね。

 

 

 という事で自分が思い付くフェニックスについて語って来ましたが、実在しない霊鳥とはいえこの美しさ、気高さ、高潔さ、崇高さは正に「花鳥風月」だと思いますね。

 自分もフェニックスのように、鳳凰の如く羽搏いてみたい。いや、これは己惚れ過ぎです。鳳凰の羽搏きを見てみたいですね 😉

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早熟の翳  十九話

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 断じて行えば鬼神も之を避く。大学を卒業してからの数年間、司法修習も終えた誠也は初志貫徹、見事に志を遂げ法曹三者である弁護士になる。大した障害にも阻まれず、難なく事を成就出来た過程を思い返せば、鬼神とは寧ろ誠也自身の事であったと言っても過言ではない。

 社会人となった誠也は満を持して大きな人生の舞台に羽搏きをあげる。早熟なヤンキーとしては、ひよこが鶏になる成長過程と比べるとその速度は些か遅い気もするが、僅か24歳にして法曹に成る事を果たした彼は何ら省みる事も無く、その表情はあくまでも爽快であった。

 燦然と輝く陽射し、空を優雅に飛び回る鳥、吹き渡る風、屹立する樹々、可憐に佇む草花、その全てが新鮮に見える。誠也は清々しい心境で研鑽を積むべく林田法律事務所に就職した。

 そこは規模の小さい事務所で部屋は少し黴臭い。高齢の林田先生は誠也の風貌には大して愕かなかったが、皺枯れ顔の眼力の鋭い目つきでこう言う。

「いきなりで悪いがうちではいい給料はやれないよ、それでもいいのかい?」

「全然構いません、自分は金儲けがしたくて法曹に成った訳じゃありませんから」

「そうかい、謙遜とはいえ今の時代にそんな事を言う人は珍しいね」

「いいえ、謙遜などではありません」

「ま~いいよ、じゃあ取り合えず今は大した仕事は無いから、俺の手伝いでもして貰うかな」

「はい、分かりました」

 誠也の返事は一々折り目正しく、先生は感心していた。

 リーガルアシスタントとして働く誠也の主な仕事内容は来客対応や経理業務等の一般事務に裁判所への資料提出、依頼人や相手方とのスケジュール調整、裁判所の細かいルールに従った資料作成であったが、それを担っている事務員である先生の奥方から指導を受け一つ一つ勉強して行くのであった。

 誠也の営々と仕事に取り組む様は先生夫妻を感銘させる。誠也はみるみるうちに仕事を覚えて行くのであった。

 

 ある意味住む世界が違えども誠也は修二や清政とも相変わらずの友好関係を保ち月に2、3回飲みに行く事も欠かさなかった。三人はまた例の親っさんの店に行く。

「誠也よ、健太はやっぱり俺が面倒みる事にしたよ、頼むから怒らないでくれ」

 清政の顔は覚悟を決めた男の顔だった。

「そうか・・・・・・。お前のその顔を見ればこれ以上は何を言っても同じだろうな、一人前のヤクザにしてやってくれよ」

「分かった」

 修二は相変わらずの明るい表情で酒を飲み続けていた。

「修二は最近どうなんだよ? そろそろ親方になるんじゃないのか?」

「まだ早いな、あと数年はかかるだろうな」

「そうか」

 親っさんはこの三人が来れば何時も美味しい料理を振る舞ってくれる。その一つ一つが旬のものでどれをとっても酒のあてには勿体ないぐらいであった。

「ところで誠也よ」

「まだ何かあんのか?」

「いや、これは少し言い難いんだが、お前うちの顧問弁護士にならねーか? 親父も賛成すると思うけどな」

「何言ってんだよお前、俺はまだ事務所で見習いやってるだけだぜ? そんな俺にヤクザの顧問弁護士なんて出来る訳ねーだろ」

「だから、今直ぐじゃなくて将来の事を言ってんだよ、どうだ?」

「いやダメだ、俺はもうアウトローな世界には関わりたくねーんだよ、分かるだろ」

 清政は少し怪訝そうな顔をして言う。

「何だよ、嘗ての陸奥守総長も今では腑抜けになっちまったのかよ」

「何だとゴラ!」

 修二が慌てて仲に入ろうとしたが先に入ったのは親っさんだった。親っさんは何時になく鋭い目つきで口を切る。

「おいお前ら、お前らだけは絶体に揉めてはいけねーよ、俺が出る幕じゃねーだろうがお前ら三人が争う事はせっかく落ち着いたこの界隈をまた刺激する事に成りかねない、それぐらい分かるだろうよ、もしそうなれば俺ももうお前らを店には入れねーぞ」

 三人は沈黙を余儀なくされ、それからは殆ど口を利く事なくただ整然飲んでいるだけだった。

 店を出た三人はそのまま家に帰る。今までも揉めた事が無かった訳でもないが今回の清政の言い方にはどうも納得出来ない誠也であった。

 

 家に帰った清政は父に早速その事を告げる。すると父は烈火のごとく怒り出し清政を破門するとまで言い出したのだった。

 他の若い衆達の制止を振り解き父は更に清政を怒鳴りつける。

「コラ、お前何様なんだよ!? 息子とはいえまだ部屋住みの分際で出しゃばった事してんじゃねーぞコラ! 健太の事も仕方なく引き受けたばかりなのに、今度はうちの顧問弁護士だ? お前何時からそんなに偉くなったんだよ」

「親父すまねえ、分かったよ、だから破門だけは勘弁してくれよ!」

「だから、その親父という呼び方も辞めろって言っただろ!」

「そうだった、親分」

「お前そんな調子じゃ俺の跡は継えねーな~、先思いやられるよ・・・・・・。」

 清政の心には大きな穴が空いたようだった。彼のした事は確かに短慮であったが、あくまでも組の行く末と誠也の事を想った上での所作で、調子に乗るような気はさらさら無かった。しかし己惚れた行為であった事も事実で、本来ならケジメをつける必要があるにも関わらず、父である親分の寛容さが無ければどうなっていたか分からない。

 清政はただ義兄弟の契りを結んだ誠也と同じ道を歩みたいだけだったのだ。それはヤクザとか堅気とかいう枠の中だけの話でもなく、同じ川を渡りたいという純粋な気持ちの表れであった。だがそれを実現出来ないのも世の常で、そんなに簡単な世の中でもない。

 清政は今回の事に依って三人の結束が緩んでしまったと大袈裟な考えをし始め、暗鬱な想いに耽っていったのだった。

 

 その後も誠也は休む事なく出勤する。彼の誠実な仕事ぶりは相変わらず二人の目を引くが、それに応えてやるだけの甲斐性はこの事務所にな無い。そんな事には一向に構わず真面目に仕事に精を出す誠也に対し先生は今度の訴訟で自分の傍らにいて一緒に行動するよう指示を出す。

 誠也はやっとこさまともな仕事が出来ると思い張り切る。昂揚感に充たされた彼の心中はまるで長い間地に伏した竜が天高く舞い上がるよう漂いを見せる。

 誠也はそん心境を隠せないまま先生と一緒に拘置所へ赴いた。誠也が運転する車は遠く郊外にあるその拘置所まで、街中には余り見慣れない穏やかな田舎道を横目に見ながら颯爽と走り抜ける。先生のスピードを出し過ぎじゃないかという声を等閑にしながら。

 拘置所に着いた二人は受付で手続きを済ませ収容されている殺人容疑がかけられている被告人と面会する。あれだけ暴走族で暴れていたにも関わらず、今まで一度も警察署で留置された経験もない誠也の目には初めて来る拘置所の風景が真新しく映る。やはり誠也はそういう点に於いても完璧過ぎたのか、そんな思いも他所に二人の前には既に被告人の男がいけ好かない態度で佇んでいた。

 誠也の高揚感は一気に冷め、目の前に居るその男の顔から眼を背ける事が出来なくなった。男の不遜な態度は到底人にものを頼む態度には見えない。

 誠也が苛立っている中、先生は実に落ち着いた様子で男に語り掛けるのであった。

 

 

 

 

 

 

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